回復期からもれる患者を救い上げる規定
中医協におけるリハビリテーション関係診療報酬論議(2010年2月18日)を読むと、いくつか興味深い点が見えてくる。
ひとつは、疾患分野別にリハビリテーション診療報酬をめぐる対立が存在していることである。今回は、脳血管障害等リハビリテーション料の引き上げやがんに対するリハビリテーション報酬が新設されるなかで、外来の運動器リハビリテーション料が下げられた。
第2点は、現状の診療報酬体系だとリハビリテーションからもれる患者がいることを考慮し、救い上げることが必要だという論議がされていることである。亜急性期に関する論議を再掲する。
○鈴木委員
リハビリについて3点ほど伺いたい。(中略)3番目に亜急性期のリハビリテーションであるが、一方では回復期リハビリテーションにおいて、例えば1日に6単位以上などリハビリの密度が濃くなるとそれに耐えられない患者が出てくる。亜急性期では、リハビリが必要な患者には、そういった期限が過ぎた患者とか高機能の回復期リハが適さない患者でもそこでリハビリができるような、すなわちリハビリから漏れる患者がいないようにする必要がある。そのような配慮がされているのか。
○鈴木委員
それはそれでよいが、私が申し上げたのは、回復期の入院においては発症から2カ月以内など制約がある。それを過ぎた患者でも、亜急性期で漏れなくリハビリが受けられるような配慮が含まれた文章であるのか確認したい。
○医療課長
文章の中では記載はないが、実態としては鈴木委員の仰る方向で運用されるよう対応していきたい。
平成22年度診療報酬改定における個別改定項目について、資料(総−3)(PDF:445KB)(2月3日)と資料(総−1)(PDF:2,050KB)(2月12日)を比較してみると、次の文章が新たに加わっている。
第1 基本的な考え方
1.回復期リハビリテーション病棟に導入された質の評価については、質の向上につながっていることが検証部会の結果明らかとなった。さらに質の高いリハビリテーションを行っている病棟を評価する観点から、休日においてもリハビリテーション提供可能な体制や、充実した量のリハビリテーションを提供していることの評価を行う。
また、急性期から連続したリハビリテーションが行われる場合に対して配慮する。
2.検証部会の結果より、亜急性期病棟において、リハビリテーションを行っている患者が多く入院していることが明らかとなった。亜急性期病棟における、合併症等、密度の高い医療を必要とする患者に対する回復期のリハビリテーションの提供について、評価を行う。
1.充実したリハビリテーションを行う回復期リハビリテーション病棟の評価について
(3) 発症早期からのリハビリテーションの提供を推進するため、発症から回復期リハビリテーション病棟入棟までの期間が一部定められているが、急性期病棟において1日6単位以上の充実したリハビリテーションが提供された日数については、当該日数から除外して計算する。
2.亜急性期病棟におけるリハビリテーションの評価について
(1) 亜急性期病棟においても、急性期後の患者や急性増悪した在宅患者を受け入れ、密度の高い医療を行うとともに、急性期後のリハビリテーションを提供していることの評価を新設する。
なお、リハビリテーション提供体制加算を算定している患者については、疾患別リハビリテーション料の算定日数の上限の除外対象者とする。
どうやら、回復期リハビリテーション病棟からもれた患者は、亜急性期病棟で吸収しようという意図らしい。論議の流れからすると、急性期から回復期にかけてのリハビリテーションの制限をするという意図はあまり感じられない。発症から回復期病棟入棟までの期間、短縮の可能性(2010年2月16日)で示した懸念は杞憂に終わりそうである。