中医協におけるリハビリテーション関係診療報酬論議

 2月16日、において、第165回(2月3日)から第169回(2月12日)まで5回分の中医協議事録がまとめて公表された。10/02/03 第165回中央社会保険医療協議会総会議事録に、リハビリテーション関係診療報酬に関する議論内容が示されている。今回の診療報酬改定の背景を探るうえで必要な資料と考え、該当箇所を全文転載する。
 なお、遠藤会長と医療課長以外の発言者は以下の3人である。いずれも日本医師会幹部に代わって中医協の診療側委員に選ばれたメンバーである。

○鈴木委員
 リハビリについて3点ほど伺いたい。まず21pの運動期リハであるが、日本臨床整形外科学会というところから要望が出ているのでお伝えする。2点目は運動期リハ(I)の算定要件が入院中の患者のみとなっているのはどうしてなのか、外していただきたい。また点数は脳血管リハ(II)と合わせていただきたい。3点目として、改定後の運動期リハ(II)の点数が下がるのかと心配されており、上げていただきたいという要望をいただいている。
 私からも運動期リハ(I)の患者が入院に限ることになったのはどうしてかを質問したい。あと回復期リハに関しては、私どもの現場や歯科の先生から聞いているが、現在回復期リハビリ病棟の日常生活機能評価の名称が非常に現場で紛らわしい。普通はBar- thel Index, FIMを用いているが、これらは日常生活の技術度をみる評価の方法であるので、これと元々の看護分野の日常生活機能評価の名称が現場で非常に紛らわしいので、できれば回復期リハ看護必要度の名称に変えていただきたい、というご意見をお寄せいただいている。3番目に亜急性期のリハビリテーションであるが、一方では回復期リハビリテーションにおいて、例えば1日に6単位以上などリハビリの密度が濃くなるとそれに耐えられない患者が出てくる。亜急性期では、リハビリが必要な患者には、そういった期限が過ぎた患者とか高機能の回復期リハが適さない患者でもそこでリハビリができるような、すなわちリハビリから漏れる患者がいないようにする必要がある。そのような配慮がされているのか。


○医療課長
 まず1点目の運動期リハ(I)はなぜ入院患者に限定するのかという質問であるが、結論から申し上げると、これ以外の他のリハビリとの整合性を取ったためである。例えば脳血管疾患リハビリを考えてみると、高い点数である脳血管疾患(I)は、入院のかなり早い段階からのリハビリを考えている。それとの整合性を考えれば運動器であっても入院患者ではないか、ということである。それから2点目であるが、基本小委のところでお示ししたが、人員配置の基準その他等を考えると、確か一覧表を作成しマトリックスにしてお示ししたが、ある程度人員配置などを考慮した点数を設定したいと思っている。3点目のご懸念については、結論を申し上げるとある程度そのような方向性となるのではないか。この点は、医療経済実態調査やその他種々のデータを比較した上で、リハビリの人員配置基準が緩やかであるので、他のリハビリ点数との均衡を考慮してそのような点数の提案を行おうとしているということである。
 それから、Bar- thel Index, FIMのようなものに関連して、回復期リハ看護必要度のような名称の提案であるので改めて検討してみたい。もう一つは、期限が過ぎた患者、おそらく標準日数を超えた患者のことであろうが、前回の診療報酬改定のときに、標準算定日数を超えた場合であっても医師が回復の必要があると認めた場合にはリハビリが継続できる。また今日の提示でいえば23pの維持期のリハビリテーションで申し上げたように、医師が標準の算定日数を超えて必ずしも回復の見込みがなく、介護保険に移行して欲しいが、そういう場合でも必ずしも地域に充実していないとかその他患者が認められる場合には、維持期において13単位までのリハビリの提供ということで、当時は暫定的に制度を作った。それをさらに延長しようということである。

 
○鈴木委員
 それはそれでよいが、私が申し上げたのは、回復期の入院においては発症から2カ月以内など制約がある。それを過ぎた患者でも、亜急性期で漏れなくリハビリが受けられるような配慮が含まれた文章であるのか確認したい。


○医療課長
 文章の中では記載はないが、実態としては鈴木委員の仰る方向で運用されるよう対応していきたい。


○安達委員
 私は整形外科医ではないが、21pについて鈴木委員は了解されたと仰ったが、私は了解できない。つまりこういうものを2段階を3段階にして、より高度のものを作る。そういうときに上は必ず高い点数となるが、あとは点数を下げるという設定をされる。ある程度財政中立的な考え方であるのかと思うが、やっている医療機関にとっては、その点数で器具の減価償却や人員配置、雇用などを考えて運用している。それが今のご説明だと、人員配置等の要件からして多少は下げてもいいような条件があるのではないかといわれた。しかしそれであっても人員配置の要件を変えているわけではない。だったら今までの点数は何だったのかということとなり今の説明では理解しにくい。もう一つは、医療経済実態調査のデータもあると仰った。整形が跳ね上がっていたことを仰っているのであろう。その点については医療経済実態調査のデータの代表性についての疑問をかねてより指摘している。とくに個々の診療科については、内科以外はたった二桁の数字である。それだけでも代表性は乏しい。整形外科のデータをみると、過去は今回よりも低かった。それぞれの総医療収入とそれに要した医療経費の総収入の割合をみると、高かった今回のほうがそれより低かった前回よりも割合が高く、経費がかかっているのが実態である。それが意味することは、ただ単に利用者の多い医療機関がたくさん選定されただけではないか。そういうことを背景に、何も人員配置基準を変えないまま、上に高い点数を作ったからといって点数を下げるという考え方は、私は理解できないということを申し上げる。


○嘉山委員
 今のリハビリに関しては、安達委員の意見に反対である。診療科の偏在をみても明らかにリスクが非常に少ないほうに流れているのは、経済実態が現れていると思う。リハビリについては手間をかけると効果が明らかに違うのはエビデンスとして出ている。やはり例えば日本で最高の初台のリハビリテーションとそうでないところとでは効果が違う。点数で差をつけるのは当然である。鈴木委員が仰った、整形外科学会から頼まれたことを評価しないでお話になったと思うが、脳卒中リハと骨折などの運動期リハとは全く違う。業務内容が全然違うのでそれを一緒にすることは無理がある。その2つに関しては、事務局案が健全である。
 但し、がんのリハビリについて、坂本専門委員とこの前同じ意見であった。これもむやみやたらと20分間マッサージしていれば点数が取れるだけでは困るので、中身を教えてくれと申し上げたが、これも丁寧な表が提出されている。参考?1−1−の1、がん患者に対するリハビリの特性についての○2に「例:骨転移に伴う神経根症状」とある。この神経根は前根か後根か。細かい指摘ではあるが、これによってリハビリの効果は全く違う。もし後根であれば緩和医療に入る。前根であれば手術しなければ治らない。例としては非常に不適切なので外したほうがよい。


○遠藤会長
 事務局には、もう一度精査していただき、最終的なものにおいては修正するなど対応していただきたい。


○鈴木委員
 脳血管、運動期、心臓など疾患別リハが始まって、整形外科医からみればなぜ脳血管より低いのかなどの議論が出てきている。さらにがん患者のリハビリが始まってきている。そうするとこれからいろんなところの団体から疾患別リハを評価してほしいという声が出てくる可能性がある。お互い専門が違えばどっちが有効だ、あるいは点数が高い、低いという評価が難しくなってくる。そういう意味では昔あった総合リハというものをまた復活してほしいという声がある。やはり一人の人が、一つの疾患別リハだけでは割り切れないこともある。例えばがん患者であっても、今回は急性期リハが認められるということだが緩和ケアの末期もある。その場合がんでみるのか廃用でみるのかなどいろいろある。一度整理して総合リハをもう一度作ることを検討する必要があるのではないか。


○遠藤会長
 これは中医協の議論により細分化されていった経緯がある。これは今後の検討の中で、また再統合ということを考えたらどうかという提案であった。


○医療課長
 基本小委の中で、ほとんどこれに近いものを整理し提示したつもりでいる。その時には総合リハということは伺っていなかったので、基本小委の議論に乗ったものである。ただ、学会の先生方の一部でそのような声があることは承知している。会長から上手にコメントいただいたが、次々期改定に向けて、そういう議論があるのであれば準備したい。


○遠藤会長
 そのような形で対応したいということでよろしいか。


○鈴木委員
 承知した。


○嘉山委員
 今の整形のことであるが、やはりちょっと違うのではないか。私も脳卒中リハの結果をみている。専門家が脳卒中についてきちんと行ったリハビリの効果と若い頃のリハビリとでは全然違う。そこはただやっているリハではなく、患者に効果があるリハビリをやるべきである。そう言うと鈴木委員は田舎では専門のリハがいないと言うが、それでひっくるめてしまうと何時まで経っても30年前の医療を行うことになってしまう。保険点数で推進する方策をつけないと、患者のためにならない。


○遠藤会長
 来年度以降の議論の中で精力的にやりたい。


○鈴木委員
 嘉山委員は誤解している。私が考えている総合リハは、疾患別リハの上位に位置するレベルの高いリハビリのことである。嘉山委員がお望みのもっと効果があるリハビリを集中してやろうというシステムを作りたいということである。


○遠藤会長
 その事を議論する時期になったら、積極的な発言をお願いする。


○安達委員
 先程の質問について、事務局の見解をお訊きしたい。今2つあるリハの上に高い点数を作る。こういうことは今までにもよくあった。より高度を作ったときに、必ず下の現行のものは下げることが一般的にはよく行われる。この考え方の根拠は何か。今までにあったものについてかかる人件費や経費が変わるわけではないのに、下げることはどういう考え方で行われているのかお訊きしたい。あえて申し上げれば、医療経済実態調査は根拠がないと申し上げた。それ以外に根拠はあるのか。


○医療課長
 そちらからお応えする。医療経済実態調査は中医協委員の皆さんのご相談に基づきデータを取り、分析をし、評価をしていただいている。極めて短い時間に限られた予算の範囲内であるので、必ずしも十分ではないかもしれない。刷新会議のように話題にし、これだけで議論が進むのは問題であろうと思うが、医療経済実態調査をどうしていくかというのは事務局だけが決めたわけではない。これまでの議論の中でこういったものは参考にしようとして進んできたわけである。それはある程度合意の上のものであるが、だからといって医療経済実態調査がこのままでよいというわけではない。それから整形外科に限るかは別として、客体数が少ないのは承知しているので、単年度だけでなく過去4回並べて、各診療科はどうなのか、過去4年みたときどうであったかを活用している。最初の話に戻るが、現行の点数を必ずしも下げるということではない。ただ今回は他の疾患別リハや人員配置基準等を勘案して少し下げる方向で提示させていただいている。


○遠藤会長
 安達委員そのような回答である。


○安達委員
 納得はしていないが、時間がかかるので結構である。


○遠藤会長
 議事運営にご協力ありがとう。