促通反復療法(川平法)とHANDS療法

 本日、NHKスペシャルが放映された。脳卒中慢性期の上肢機能障害に焦点を当てていた。明日以降、患者さんからの相談が増えると予想されるので、関連する資料をまとめてみた。


# 促通反復療法(川平法、鹿児島大)

 著者が提唱している促通反復療法は伸張反射や皮膚筋反射を用いて目標の神経路の興奮水準を高めることによって患者が意図した運動(歩行から 個々の指の屈伸まで)の実現と反復を可能にしたものである。

片麻痺回復のための運動療法―促通反復療法「川平法」の理論と実際

片麻痺回復のための運動療法―促通反復療法「川平法」の理論と実際


 日本リハビリテーション医学会専門医会学術集会(2009年、諏訪)と、日本リハビリテーション医学会学術集会(2010年、鹿児島)で川平先生の講演を聞いたことがある。当初、人の名前を冠する治療法がリハビリテーションの世界では多いこともあり、本当に効果があるかどうか疑問を持ちながら聞いた。話を聞いてみると、脳科学に基づいた理論的根拠があり、CI療法や経頭蓋磁気刺激に相通ずるところがあることが理解できた。ただし、テクニック取得が難しそうであり、療法士にとって一般的な治療法となるかどうかがまだわからないなという感想を持った。
 今回、番組で紹介された方はかなり著明な改善を示している。テレビの影響は大きい。当面、外来で相談されたら、まだ普及していない治療法であることを説明しなければならない。日本中から治療希望の方がhttp://com4.kufm.kagoshima-u.ac.jp/kirishima_reha/index.htmlに殺到するのではないかと予想する。


# HANDS療法(慶応大)


 こちらも、昨年の鹿児島でのリハビリテーション医学会のランチョンセミナーで講演を聞いた。

 麻痺手指を随意的に伸展させようとした時に麻痺側総指伸筋に生じる微細な筋活動を表面電極により捉え、その筋活動量に応じて麻痺側総指伸筋に電気刺激を与える(つまり強く伸ばそうとすると強く刺激されて、弱く伸ばそうとすると弱く刺激される; 患者さん自身の随意運動により刺激の強度が調節可能な)特殊な電気刺激装置(随意運動介助型電気刺激装置: IVES )と手関節固定装具を組み合わせた装置(図)を1日8時間装着し、3週間、訓練のみならず日常生活でも麻痺手の運動を促す治療です。


 手関節固定装具は、機能的な肢位を保ち手指を使いやすくするために用いる。番組の中でも患者さんが屋外歩行時に装着していた。この手関節固定装具だけでも欲しいものだと思っていたが、昨年の段階では、まだ市販されていなった。
 なお、BMI(Brain Machine Interface)についても紹介されていたが、そちらは慶応大のホームページ内にあるkeio-reha.com - このウェブサイトは販売用です! - リハビリ リハビリテーション 慶應 信濃町 医学 大学 慶應義塾 医学部 リソースおよび情報に紹介されている。患者さんが参考にした新聞記事も載っている。


 脳卒中上肢の機能障害に関しては、CI療法、反復経頭蓋磁気刺激、ロボット療法など様々な治療法が開発されてきている。2000年代初頭と比べると、隔世の感がある。今後の脳可塑性研究が進歩するなかで、一般的になってくる治療法もあると予測する。ただし、医療経済的な判断もされることは間違いない。長期のリハビリテーション制限と引き換えに、いずれかの治療法が診療報酬に位置づけられる可能性もあると考え、情報収集に努めていくことにする。