要介護認定申請、急激に増加

 東日本大震災後、要介護認定申請が増えている。

 東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県の沿岸37市町村のうち8割の30市町村で、震災後の4〜6月の要介護認定の新規申請件数が昨年同期より増加したことが毎日新聞のまとめで分かった。3県全体では9656件で2510件増加。避難生活などの影響で、認知症や体調を悪化させた高齢者が多いためとみられる。3県では少なくとも計65施設が休廃止に追い込まれ、介護サービスを十分提供できない状態も続いている。

http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110907ddm001040074000c.html


 震災で多くの要介護認定者が亡くなったり、行方不明になったりしている。もともと、介護認定を受けている方で介護度が悪化した例は含まれていない。それにも関わらず、申請数が昨年4〜6月の7146件の35%増となっている。沿岸市町村に居住する高齢者が健康状態悪化を如実に示すデータである。


 要因として、次の点があげられている。

  • 避難所などでの生活を余儀なくされ、精神的ストレスなどで体調を崩すケースが多い
  • 予防の観点から、避難所から外出して運動したい、入浴したいという(ケアの)ニーズがあった
  • 家族の被災による介護力の低下
  • 道が悪くなり、つえや押し車を使えば歩ける人が外出できずに筋力が低下した例など、震災をきっかけに悪化した方は多数いた


 様々な要因があげられているが、もうひとつ大事な要因がある。利用料減免の影響である。被災者で一定の条件を満たすものは、介護保険料利用料が免除される。このため、申請が増えた可能性がある。利用料減免については、東日本大震災により被災した介護保険の被保険者に対する利用料の免除等の運用についてに詳しい情報がある。減免期間は来年2月29日までの予定となっている。


 では、介護サービス事業者が潤っているかというとそうではない。施設系サービスが定員超過となっている一方、訪問系サービスは苦戦を強いられている。

 施設側で定員超過が続く一方、訪問介護などの在宅サービスを提供する事業者側では、利用者が減少して経営が悪化する例も起きている。在宅で介護可能だった高齢者が家を流されて居場所を失い、特養などに入居した例も少なくないからだ。

http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110907ddm003040007000c.html


 結果の概要|厚生労働省にある、介護給付費実態調査月報(平成23年6月審査分)|厚生労働省都道府県別データをみても、被災3県の介護サービス費用は全国平均より低い。


 被災後の不自由な生活が続く中で体調を崩す高齢者が増えたことが、要介護認定申請が増えた最大の原因と推測する。ただし、認定は受けたものの実際に利用できるサービスが少ないこと、地域状況に変化が生じ介護サービス利用まで至らない者が数多く残されているのではないかと危惧する。