発症後時間が経ってから回復する重度意識障害者に関する文献集

 クモ膜下出血と頭部外傷では、発症後1ヶ月以上経った時点で重度意識障害が続いていても、時間が経ってから覚醒レベルがアップすることがある。このことに関してまとめたサイトを探していたところ、遷延性意識障害からの回復例(2000年代)に出会った。「病状の経過からみて3ヵ月以上、意識障害が継続していると判断される」患者の回復に関する論文が収集されている。クモ膜下出血や頭部外傷が原因として多い。
 脊髄後索電気刺激・経頭蓋磁気刺激などの物理的刺激、音楽運動療法や化粧療法などのリハビリテーション、髄腔内バクロフェン療法などの痙縮対策、腹臥位療法、鍼治療、摂食嚥下療法、栄養管理、コミュニケーション手段の確保、中枢神経抑制剤中止・TRH投与などの薬物療法調整など、様々な治療が試みられている。その中で、次の論文が目を引いた。

  • 塩崎 忠彦(大阪大学大学院医学系研究科生体機能調節医学講座):重症頭部外傷受傷後に植物状態を呈している患者は、いつ目を覚ますのか?、日本救急医学会雑誌、16(8)、448、2005
    • 35例中21例(60%)が意識を回復した。意識回複までに要した期間は平均5.0±5.2ケ月。
    • 意識が回復した21例のうち、MD以上のレベルにまで回復したしたのは3例(14%)だが、うち2例が社会復帰した。


 少なくとも、重症頭部外傷で意識回復する群は、かなりの時間がかかる。重症クモ膜下出血でも同じような傾向があると感じている。しかし、現在の日本の場合、受傷および発症後2ヶ月を超えると回復期リハビリテーション病棟の適応からはずれる。そのような患者の受け皿となっていた障害者施設等病棟や特殊疾患病棟は、2008年度からは脳血管障害や認知症が対象外となり運営が困難となった。近隣の障害者施設等病棟は軒並み別の施設体系に鞍替えしている。受傷・発症から時間がかかった重症意識障害者の行き先が減少している。リハビリテーションの適応があっても、十分な対応を受けられない現実がある。