リハビリテーションが必要な人はどこにいる

 県のリハビリテーション関係者が集まって情報交換を行った。次のようなことが話し合われた。
 震災後、外傷や脳血管障害はさほど増加していない。問題は、高齢者や要介護者が低体温や低栄養などの劣悪な環境にさらされていることである。被災し、歩行補助具や装具、福祉用具を失ったものもいる。栄養補助剤や医療材料などの物資不足も問題となっている。リハビリテーションのニーズは、これら環境の変化に伴って生じる生活機能低下を防ぐことにある。
 実際に介入しているリハビリテーション医からは、要介護者は避難所には数%しかいないという情報が出された。避難所の環境は劣悪であり、到底長期間は生活できないためである。では、早期介入が必要な高齢者や要介護者はいったいどこにいるのか。避難所よりは、自宅、親戚宅、福祉避難所などの施設、病院などにいるのではないかと考えるべきではないか、ということになった。
 自宅の場合、ライフラインが復旧し、ガソリンも供給され、居宅支援事業所も居宅サービス事業所も活動しているようなら問題はない。しかし、実際には、未だに電気・水道・ガスが復旧せず、介護サービスも受けられずに布団にくるまって、閉じこもっている人がいる。家の中が散乱し、片づけができない状態で放置されていることもある。ケアマネが活動しているば良い。しかし、ケアマネ自身が被災し機能していなければ、行政も実態を把握することはできない。遠方の親戚宅に避難していれば、介護サービス提供に必要な情報は伝わらない。地道な手法となるが、ローラー作戦を組んで、御用聞きをするくらいのことを考えた方が良い。
 福祉避難所などの施設、病院も要注意である。震災前の生活が把握できていないと、以前より寝たきり状態だと勘違いされかねない。当院でも、低体温で搬入された寝たきり患者が、暖房がきいたところで3食を提供し、廃用予防・改善のリハビリテーションを提供しただけで、徘徊するくらい元気になった。しかし、リハビリテーション医療が不十分なところだと、寝たきりが作られている可能性がある。沿岸部よりヘリコプターで搬送されてきているような方の場合、家族と全く連絡がとれず、目標設定に難渋する。
 地域リハビリテーションシステムが構築されているところでは、リハビリテーションの拠点となっている医療機関や介護事業所に相談できる体制を作れば良い。通常と異なるのは、住まいを失った方が多いため、退院先探しに苦労することだけである。入院、外来、通所、訪問など様々な形で、その人にあったリハビリテーションサービスを提供することができる。仮設住宅へ訪問し環境調整をすることも任せて欲しいと思っている。要介護認定とそれに伴う区分限度支給額を撤廃してもらえれば、安定した生活の再構築は難しくはない。
 拠点となる医療機関や介護事業所がもともと少ない地域は、こうはいかない。気仙沼、南三陸など津波被害が大きかったところは、それでなくても少ない医療・介護資源が壊滅的な状態となっている。長期間、腰を据えた体制作りが求められる。罹災し、職場を失った医療従事者や介護職員を県が臨時雇用し、サービス再構築をすることも考えた方が良いのではないかと意見も出されていた。
 避難所や急性期医療機関での活動は、非日常的であるがゆえに目立つ。しかし、被災地で今求められているのは、日常活動を当たり前のように行うことである。残された医療機関や介護事業所が疲弊しないような援助を待ち望んでいる。