通所リハビリテーション改定討議の論点

 第83回社会保障審議会介護給付費分科会資料 |厚生労働省を見ると、介護報酬改定に関する具体的な議論が開始されている。資料2リハビリテーションについて(PDF:675KB)を開くと、次のような論点が提起されている。
 まず、通所リハビリテーションについてまとめる。

【論点1】
 通所リハビリの機能を明確にし、医療保険から移行をより円滑にするため、個別リハビリに着目した評価に見直してはどうか。
 具体的にはリハビリテーションマネジメント加算の算定要件を見直し、週1回利用での個別リハビリを実施する時の評価を行うとともに、所要時間1時間以上2時間未満の短時間型通所リハビリにおいて個別リハビリの更なる評価を行ってはどうか。
 また、あわせて所要時間が長時間である通所リハビリの基本報酬については適正化を行ってはどうか。

(感想)
 1時間以上2時間未満の短時間型通所リハでは、医療保険と同様、1回20分の個別リハビリテーションを複数回行うとその分の算定が可能となる。基本サービス費とリハビリテーションマネジメント加算がつくと、かえって医療保険より報酬額が高くなる可能性がある。明らかな介護保険への誘導策である。
 厚労省用語で「適正化」とは引き下げのことを意味している。したがって、所要時間が長時間である通所リハビリテーションの基本報酬は下げられることになると予測する。
 最大の問題点は、要介護度による区分支給限度額による制限である。例えば、脳卒中片麻痺でも基本的ADLが自立している場合には、要介護度は低く認定される。若年で復職を目指すなどの目的で頻回のリハビリテーションが必要な場合でも、介護保険では提供不可能となる。また、独居その他の理由で訪問介護などが頻回入っている場合、リハビリテーションが必要でも介護保険からは供給できないことになる。要介護認定、区分支給限度額、ケアマネジメントの3つの制限があることにより、リハビリテーション提供にブレーキがかかり、社会保障費抑制が果たせる。厚労省は、維持期リハビリテーション介護保険で行うことに執着しているのは、ここに理由がある。

【論点2】 通所リハビリにおける医療の必要性の高い利用者を受 け入れることを評価してはどうか。

  • 【対応】要介護4、5の利用者のうち、下記の状態にある利用者に対して、医学的管理、療養上必要な処置を行った場合を加算で評価する。
    • 常時頻回の喀痰吸引を実施している状態
    • 呼吸障害等により人工呼吸器を使用している状態
    • 中心静脈注射を実施している状態
    • 人工腎臓を実施している状態
    • 膀胱または直腸障害で、身体障害者障害程度等級表4級以上に該当し、かつ、ストーマ処置を実施している状態
    • 経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養が行われている状態
    • 褥瘡に対する治療を実施している状態
    • 気管切開が行われている状態

(感想)
 資料に、「通所リハビリにおいては、医療の必要性の高い利用者の割合は必ずしも高くない。」と記載されている。介護保険財政に与える影響はほとんどないことより、大盤振る舞いされることが予想される。

【論点3】 報酬体系の整合性
【対応】現状ではサービス提供時間により、個別リハビリが本体報酬に包括されているかどうかの取り扱いが異なる等、複雑な報酬体系となっているため、サービス提供時間に関わらず同一の取り扱いとしてはどうか。


(感想)
 論点1と相通ずる部分である。報酬体型の簡素化は歓迎できる。

通所介護と同様の論点
【論点4】サービス提供事業所と同一建物に居住する利用者については、真に送迎が必要な場合を除き、送迎分の適正化を図ってはどうか。
【対応】通所介護と同様の対応をとってはどうか。


 資料1通所介護の基準・報酬について(PDF:638KB)には、次のような記載がある。

    • 平成18年報酬改定において、算定率が9割を超えていた送迎加算(片道47単位)を基本報酬に包括化して評価したところであり、現在も、往復分の送迎に係る評価が基本報酬に組み込まれているところ。
    • しかしながら、通所介護事業所と同一建物に居住する高齢者については、概ね送迎が不要と考えられ、その分利用者は不要な利用料を支払っていることになる。

(感想)
 簡単にいうと、送迎分を引き下げるということ。

【その他の論点】 通所リハビリの質の評価として、事業所毎の利用者の要介護
度変化等をアウトカムとして事業所を評価することについてど う考えるか。

  • 要介護度が低い利用者が多い事業所は、1年間の平均要介護度は重度化しにくい反面、より重度者が多い事業所ほど1年間の平均要介護度は重度化する傾向がある。
  • 重度者をより多く受け入れている事業所ほど、1年間の平均要介護度変化は悪化しやすい。
  • 通所リハビリ事業所毎の1年間の平均要介護度の変化の要因分析
    • 平均要介護度が改善している事業所と悪化している事業所で、リハビリの提供状況やリハビリ専門職の配置に大きな差は認められなかった。
    • 改善している事業所は人員配置を厚くし、充実したリハビリを行っている事業所がある一方で、重度者の割合が少なく、医療的ケアの必要性が低い利用者を中心に受け入れている事業所もあった。
    • 悪化している事業所は重度者が多く、平均年齢が高い傾向が認められた。
    • 事業所毎のサービスの質の差より、利用者の特性の方が事業所の平均要介護度の変化に影響を及ぼすと考えられ、要介護度変化をアウトカムとして事業所を評価することについては専門家からも慎重な意見があった。

(感想)
 アウトカム評価は今回は導入されない。良識的な判断である。