鉄道可動式ホーム柵設置費用

 仙台市地下鉄可動式ホーム柵が設置されてから、1年が経った。



 上の写真は、可動式柵が設置された直後に撮った写真である。現在は、ホーム柵の白い壁面に広告が並べられ、仙台市の収入増に貢献している。
 可動式ホーム柵は、転落予防に絶大な効果を発揮している。

 市交通局によると、転落事故は1987年の開業以来、計110件に上り、2009年度は5件、08年度は14件起きていたが、ホーム柵の設置後は1件もなかった。
 人身事故に至るとダイヤは大幅に乱れ、復旧の見通しが立たない場合は代替輸送に切り替えざるを得ないなど、多くの人の交通に影響が出る。
 市交通局は「酒に酔った客らの不意の転落がなくなったほか、傘や手荷物などの落下も相当数減った。安定運行が図られ、線路への飛び込みにも一定程度の抑止効果があった」と説明する。
 ホーム柵は高さ1.3メートルで列車の到着に連動して開閉。列車との間に障害物を検知するセンサーが付いており、閉じこめを防止する。市は09年10月、富沢駅を皮切りに順次設置工事を進め、全17駅に計544基を取り付けた。費用は約20億円。
 今後も柵の安定稼働を維持するため、利用者に柵に寄りかかったり、荷物を立てかけたりしないよう呼び掛けていく。
 ホーム柵は01年に東京のJR新大久保駅で起きた転落死亡事故を契機に、全国で設置が進んでいる。国土交通省によると、全国でホーム柵を使用しているのは26路線の308駅。

 
最終更新:10月2日(土)10時10分

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101002-00000012-khk-l04


 設置費用は17駅で20億円とのことであり、1駅あたりにすると、1.2億円あまりとなる。http://www.kotsu.city.sendai.jp/kigyo/keiei/subway_keiei_1.htmlをみると、仙台市地下鉄南北線の総収入は約140億円である。可動柵設置だけで14%を占める。累積赤字に苦しめられている仙台市にとっては手痛い支出である。ただし、開業当時より全線バリアフリー対策を先進的に進めてきた仙台市地下鉄にとって、有効な転落予防策があるなら実施をためらうべきではないと考えたのだろう。


 JR東日本でも、山手線に可動式ホーム柵の設置を進めようとしている。山手線への可動式ホーム柵の導入についてをみると、次のような記載がある。

1. 導入の進め方
 今回、山手線に可動式ホーム柵を導入するにあたり、「恵比寿駅」、「目黒駅」の2駅に先行導入し、山手線全駅導入に向けた検証を行います。この2駅は、ホームの構造上、早い時期に可動式ホーム柵の整備が可能であるため先行導入することを決定しました。
 先行導入する2駅の可動式ホーム柵の使用開始時期は 2010 年度を予定しています。先行導入駅で、技術的な課題、列車運行に与える影響等を検証し、その結果を3駅目以降に反映して、今後、10 年間を目途に全駅に整備を進めていく予定です。
 なお、「恵比寿駅」、「目黒駅」に可動式ホーム柵を整備するための工事費として、可動式ホーム柵の設置、ホームの構造改良等の地上工事で約30億円、定位置停止装置の設置等の車両改造工事で約20億円を見込んでいます。(山手線全駅への整備費用は、現時点の概算では約550億円程度を見込んでいますが、今後変わる可能性があります。)


 桁違いの費用がかかり、実現までに長期間を要する。特に難しいのは、6扉車と4扉車が混在していることである。先日、東京に出かけた時、目黒駅に設置されていた可動式ホーム柵が途切れている場所があった。調べてみると、7号車と10号車の部分が6扉車であるために、車両を交換するまでは設置できないことになっているとのことだった。


 仙台市地下鉄は車両は4車連結と短い。総費用20億円は、山手線と比べると随分とお得であることが分かる。これからは、酒飲みの転落事故よりは高齢者の事故対策が中心となる。可動式ホーム柵の先進地域として、仙台市が行った先行投資は適切だったと判断する。