相次ぐオーチス社製エスカレーター事故

 中国地下鉄のエスカレーターで死亡事故が起こった。どうやら、積載量の小さいタイプのエスカレーターを導入したことが原因のようである。

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 2011年7月6日、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの報道によると、北京市で5日に発生した地下鉄駅構内でのエスカレーター事故について、中国エレベーター協会の張楽祥(ジャン・ローシアン)氏は「この類の事故は全く意外なことではない」と断言した。同協会には近年、このような事故の報告がいくつも寄せられているという。


 事故は5日、北京市内の地下鉄4号線動物園駅の出口に設置された上りエスカレーターで発生。死者1人、負傷者28人を出す惨事となった。市関連当局は事故原因として、駆動装置を固定する部品が外れ、駆動チェーンが脱落したためにエスカレーターが逆走(つまり落下)したことを挙げた。安全装置も起動しなかったものと見られている。


 本来、エスカレーターの性能と安全性は年々進化しており、コンピューターやデジタルセンサーの運用によって、逆走するような事故はほぼ完全に防ぐことができるようになっているはずだ。ところが、問題は生産側というよりも買い手の方にある。公共交通機関など人の流動が著しい場所では、その運搬重量に耐えるだけの製品を使用しなければならないが、一部の地下鉄駅などは、商業施設用のエスカレーターを採用している。商業施設は駅などに比べて利用客数が大幅に少なくなるため、製品の耐用重量も大幅に低い。それにともなって、価格も3分の1ほどに設定されている。ここで購入資金を“節約”してしまった場合―つまり、商業施設用のエスカレーターを公共交通機関内で使用した場合―その耐用年数は大きく縮まり、安全装置ではカバーしきれない事態が発生する可能性も排除できない。

地下鉄エスカレーター事故、原因は「設備予算の節約」か―香港紙|レコードチャイナ


 今回の事故が発生したエスカレーターは米オーチス社製である。同社のエスカレーターは、2008年5月に名古屋地下鉄、同年8月に東京ビックサイトで同じような事故を起こしている。いずれも重量オーバーが原因と推測されている。北京地下鉄4号線は2009年9月の開業したばかりであり、日本の事故のあとに導入されたことになる。もし、公共交通機関利用に不的確な製品なら、導入時に注意を喚起しなければならない。
 今回の事故は、経費削減に走った地下鉄当局と、安全性軽視で販売を行った米オーチス社の両者の責任であると推測する。本日のTV朝日のニュース、http://news.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210708008.htmlをみると、地下鉄当局は製造業者のみに罪を負わせようとしているようだ。同種の事故が多発しているという現状を考えると、安全性を軽視した身勝手な対応のように思えてならない。