もうタクシーには乗らない方が良いのかもしれない

 信号無視・スピード違反を繰り返すタクシーに遭遇することが増えてきた。自動車運送事業に係る交通事故要因分析(平成18年度)の結果がまとまりました〜従来の事故要因分析に加え、バスの車内事故防止のための安全対策をとりまとめました〜を見ると、タクシーの事故率が急激に高まっていることが分かる。プロのドライバーが運転しているにも関わらず、安全性に信頼がおけなくなっている。もうタクシーには乗らない方が良いのかもしれない。


 「自動車運送事業に係る交通事故要因分析報告書(平成18年度)」、第3章 事業用自動車の交通事故の傾向、3-1 事業用自動車の交通事故発生状況の推移(21〜26ページ)に次のような記載がある。

1) 全事故:死者数減少、件数・負傷者数増加
 平成17年中に全国で発生した交通事故の件数(物損事故を除く)は、933,828件であり、死者数は6,871人、負傷者数は1,156,633人であった。これは、前年に比べて、事故件数が18,363減(−1.9%)、死者数が487減(−6.6%)、負傷者数が26,487人減(−2.2%)となっている。件数及び死傷者数が、前年に比べて減少している。


2)事業用自動車事故:死者数減少、件数・負傷者数増加
 平成17年中の交通事故のうち、事業用自動車であるバス、ハイタク(ハイヤー及びタクシー)及びトラックが第1当事者となった事故件数は68,409件であり、死者数は740人、負傷者数は85,248人であった。これは、前年に比べて、事故件数が375件増(+0.6%)、死者数が9人増(+1.2%)、負傷者数が48人減(−0.06%)と前年に比べてほぼ横ばいである。ここ14年間をみると、全交通事故の推移と同様な傾向を示しており、事業用自動車の事故件数及び負傷者数が増加しているものの、死者数は減少している。こうした中、事業用自動車の事故防止対策の系統的・積極的な推進が必要である。


3)保有台数・走行距離あたり事故件数:事業用自動車は、保有台数あたり最多、走行台数あたりは最低である
 全交通事故並びに事業用自動車が第1当事者となった交通事故件数をそれぞれ保有台数あたり及び走行キロ(*自動車輸送統計年報による)あたりで比較すると、保有台数1万台あたりでは全事故件数117.9件に対して事業用自動車(455.2件)が高いが、走行1億キロあたりでは全事故件数146.0件に対して事業用自動車(85.9件)が低くなっている。これは、1台あたりの走行キロが格段に長い事業用自動車の特性を反映しているものと考えられる。


(中略)


5)業態別走行キロあたり事故件数:ハイタクが高く、トラックが低い
 業態別の走行キロあたりの事業用自動車が第1当事者となった事故件数をみると、走行キロ1億kmあたりの事故件数は、ハイタクが高く(182.0件/キロ)、トラック(48.2件/キロ)が低くなっている。特に、ハイタクは、走行キロが減少している反面、事故件数の増加率が高いので右肩上がりとなっている。


 最後のグラフをみると、ハイタクの走行距離あたり事故率は、平成8年に自動車全体の事故率を越え、その後も増加を続けていることがわかる。
 本報告書の7ページに次のような記載がある。

(2)ハイタクと二輪車・自転車との衝突事故防止
 運転者に対し、二輪車及び自転車の行動特性を理解させ、それを踏まえた運転行動を徹底させる必要がある。
1)現状と問題
 マクロ統計がらも見られるようにハイタクの事故は、他車との事故(車両相互)件数が圧倒的に多く(29,954件)、中でも出会い頭事故の件数(6,587件)が増加傾向にあり、次いで追突が多い(5,677件)。


(中略)


 実車・空車別にみると、空車時の事故が圧倒的に多く、そのうち約半数は自動二輪・原付・自転車との事故である。特に、自転車との事故は増加傾向にある。
 行動類型別事故件数をみると、空車時は、実車時に比べ、「発進時」、「左に進路変更をした際」及び「右左折時」の割合が多く、実車時は、空車時に比べ、「急停止」の割合が多い。


2)対策及び今後の課題
 ハイタクと二輪車・自転車の出会い頭の事故を防止するために、ハイタク及び二輪車・自転車双方の運転者は、交差点進入時に十分な減速と左右の安全確認を行うとともに、運行管理者は、事故事例の要因を分析して運転者講習に活用する、運転者の適性診断結果を活用した指導を行うこと等が望まれる。
 空車時の事故が圧倒的に多いことから、運転者は空車時においては常に利用客を意識した運転傾向にあり、二輪車及び自転車に対する注意力が低下していると想定される。このため自動車運送事業者は、被視認性がよくない、安定性がよくない、すり抜けを行う、一時停止を怠る等の二輪車及び自転車の行動特性を理解させ、それを踏まえた運転行動を徹底させる必要がある。


 タクシー運転手の労働条件が過酷になっている*1規制緩和をすれば、タクシーの利便性は増すと構造改革論者は主張した。しかし、本報告書が示すように、この十数年、タクシー業界の安全性は悪化の一途をたどっている。歩合制で働くタクシー運転手は、収入減少を補うために、長時間、夜間労働を繰り返す。少しでも乗客を増やそうと、空車時には無理な運転行動を強いられる。自動車全体より事故率が高いという数値を見る限り、タクシー業界はプロフェッショナルとは到底言えない。バスや電車などの公共交通機関が整備されている地域では、事故に巻き込まれる危険性を冒してまでタクシーに乗る必要はない。