イスタンブールの交通事情

 ISPRMで脊髄損傷のセッションがあった。そこで、トルコの脊髄損傷の発生状況が紹介された。講演の中で、No items found - PubMed - NCBIという論文が疫学データとして紹介された。

RESULTS: Five hundred and eighty-one new traumatic SCI cases were reported in 1992. The annual incidence was found to be 12.7 per million population. Male to female ratio was 2.5:1 and the average age at injury was 35.5+/-15.1 (35.4+/-14.8 for males and 35.9+/-16.0 for females). The most common cause of injury was motor vehicle accidents (48.8%) followed by falls (36.5%), stab wounds (3.3%), gunshot injuries (1.9%) and injuries from diving (1.2%). One hundred and eighty-seven patients (32.18%) were tetraplegic and 394 patients (67.8%) were paraplegic. The most common level of injury was C5 among tetraplegics and T12 among paraplegics. The most prevalent associated injury was head trauma followed by extremity fractures. Severe head trauma resulting in death may obscure the real incidence of SCI and may cause underreporting of cases in epidemiological studies.


 1992年度のデータだが、発生率は人口100万人あたり12.7名であり、日本や米国と比べると少ない。平均年齢は男女とも35歳と若年である。交通事故が48.8%、転倒・転落が36.5%であり、この2つで約85%となる。刺創、銃創があわせて5.2%となる。四肢麻痺が32.18%、対麻痺が67.8%となっている。トルコは米国型に近い。
 脊髄損傷の予防としては、交通事故対策が強調された。シートベルト着用、自動車整備、交通状況把握、飲酒運転禁止、交通規則遵守、スピード制限など、日本では当たり前となっていることが、トルコでは今後の課題となっている。


 イスタンブールの人口は1200万人である。トルコの人口が約7000万人であり、6人に1人はイスタンブールに居住している勘定になる。
 写真は、トピカピ宮殿から眺めた新市街である。新宿の摩天楼と見間違うような景色である。



 公共交通機関建設が進められているが、人口の急増に追いつかない。地下鉄工事は掘り進むにつれ遺跡が見つかる始末で、なかなか進捗しない。「この街は、私たちに地下鉄を作らせてくれない」と市民に嘆かれている。
 おのずと、イスタンブールの交通手段の主力は自家用車となる。どこに行くにしろ渋滞にまきこまれる。交通マナーはきわめて悪い。ウィンカーなしでの車線変更、幅寄せは当たり前のことである。ちょっとでも流れが良くなると、我先にとスピードを上げる。カーチェイスに巻き込まれている気分になる。ボディがへこんでいる車、フロントガラスにひびが入っているタクシーが我が物顔に街中を闊歩している。
 歩行者も負けず劣らずである。横断歩道がないところでの横断は当たり前のことである。早足でわたるとかえって事故に巻き込まれるといわんばかりに堂々と横断している。渋滞があると、道路の真ん中でシミットというパンやミネラルウォーターの物売りが始まる。
 ツアーガイドの話を聞くと、トルコの交通事故者は約7000人とのことだった。日本の交通事故死者が約5000人であることを考えると、日本の約2.4倍の死者数となる。
 イスタンブールを移動している最中、いつ自分が交通事故に巻き込まれるか不安で仕方がなかった。イスタンブールでの最も刺激的な体験である。



 講演の中で、バイクに乗る時はヘルメットをつけましょうと強調していた。上段は頚部を守るためのヘルメットである。この絵を見て、軍事博物館でみたイェニチェリの姿を思い出してしまった。