ユニバーサルデザインタクシーの次期目標は総車両数の約25%

 ユニバーサルデザインタクシーに関する記事が2件続けてあった。

 

 前者は、電動車いす利用者の乗車をユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)運転手が断った事例である。後者は、UDタクシーは一般タクシーと同様の料金設定にしなければならないにも関わらず、車いす利用者の乗降に追加料金を設定していた事例である。

 

 福祉タクシーとUDタクシーは基本的には異なる概念である。自動車:福祉タクシー - 国土交通省では、福祉タクシーを次のように定義している。

福祉タクシーとは、道路運送法第3条に掲げる一般乗用旅客自動車運送事業を営む者であって、一般タクシー事業者が福祉自動車を使用して行う運送や、障害者等の運送に業務の範囲を限定した許可を受けたタクシー事業者が行う運送のことをいう。

 介護保険法に基づく訪問介護のなかに、通院等のための乗車又は降車の介助がある。いわゆる介護タクシー利用において、この訪問介護点数と運賃が合算されて請求される。介護保険を使用しない福祉輸送サービスや民間救急搬送も、福祉タクシーに含まれる。

 

 一方、UD(ユニバーサルデザイン)タクシーはみんなにやさしい次世代のタクシーですをみると、UDタクシーは次のように定義されている。

ユニバーサルデザインタクシーとは、健康な方はもちろんのこと、足腰の弱い高齢者、車いす使用者、ベビーカー利用の親子連れ、妊娠中の方など、誰もが利用しやすい"みんなにやさしい新しいタクシー車両"であり、街中で呼び止めても良し予約しても良しの誰もが普通に使える一般のタクシーです。
※運賃料金は一般のタクシーと同じです。 

 UDタクシーは、介護が必要な者だけが利用するものではない。健康な人を含め誰もが利用してかまわないものであるという概念に基づく。ノンステップバスのタクシー版と考えた方がわかりやすい。

 

 冒頭に示した記事を読み直すと、UDタクシーの概念自体をタクシー会社や運転手が理解していなかったことが問題視されたことがわかる。そもそもUDタクシーは電動車いすの重量に耐えられるような設計が要件となっているので、電動車いすユーザーであるこを理由として断ることは間違っている。また、誰もが利用できることが要件となっていることを考えると、乗客の属性によって料金を変更してはならない。したがって、健康だからという理由でUDタクシー利用を断ることも問題となる。

 

  バリアフリー:公共交通移動等円滑化実績報告 - 国土交通省に、UDタクシーを含む福祉タクシー数の推移が示されている。

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 令和元年度末で、37,064台の車両が導入されており、うち21,736台がUDタクシーとなっている。

 さらに、令和2年11月20日に公表された「バリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について(最終とりまとめ)」では、それぞれの分野における2025年度末までの数値目標が提起されている。 

  「バリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について(最終とりまとめ)」(概要)にある表をみると、福祉タクシー車両を約90,000台に増やし、各都道府県における総車両数の約25%についてユニバーサルデザインタクシーとすることが目標と記載されている。実に野心的である。

 街中で見かけるタクシーの4台に1台がUDタクシーになったとしたら、誰もが当たり前の存在として認識するようになる。車いすユーザーも気軽に外出できるようになる。

 

 東京パラリンピックがまもなく開催される。残念ながら、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、パラリンピアンがUDタクシーを使って訪問する機会は失われてしまった。そもそも、本当にパラリンピックが安全に開催できるかどうかが疑問視されているような状況である。しかし、パラリンピック開催を目指し、バリアフリーユニバーサルデザインの普及が進んだことは間違いない。数少ない正の遺産といえる。