悪質な身体障害偽装事件

 身体障害を偽装した悪質な詐欺事件が摘発された。

 歩行不能のはずが、車を運転して買い物。


 札幌市は25日、寝たきりの身体障害者を装い訪問介護などの介護給付費などを騙し取ったとして、手稲区在住の元道職員の男(74)を詐欺罪で札幌手稲署に刑事告訴した。


 市によると、男は実際に歩けるにもかかわらず、自身が経営していた訪問介護事業所(昨年11月廃業)からヘルパー派遣などの支援を受けていた。市が告訴の対象としたのは、男が2006年10月〜昨年7月まで受給した約700万円。


 男は1995年2月に交通事故の後遺症から歩行不能と診断され、市から身体障害者手帳(最重度の1級)を交付された。06年6月には市の調査で寝たきりの状態と判断され、介護保険法に基づく要介護4の認定を受けた。ところが、その直後に市職員が男の歩く姿を目撃、市民から「歩いている」との通報もあり、障害を偽装している疑いが生じた。


 市は昨年8月、男が車を運転し買い物に行く姿をビデオカメラで撮影。続いて11月には男が03年12月〜昨年7月までに受給したヘルパー派遣費用など約4,000万円と、不正に対する加算金を加えた計約5,600万円の返還を請求し、今年1月には男の預貯金や保険証券など約200万円を差し押さえた。


 札幌市障がい福祉課は「告訴は詐欺罪を立証するため期間を限定した。自身で訪問介護事業所を経営するなど、介護に関する知識があったという点で男の行動は極めて悪質。返還請求とは別に刑事罰を追及する必要があると判断し告訴した」と説明する。

bnn-s.com


 他の報道も参考にすると、概略は次のようになる。

  • 1991年、身体障害者手帳1種2級が交付された。1995年には障害者手帳が歩行不可能な最重度の1種1級となった。原因は交通事故の後遺症。
  • 介護保険では、要介護4と認定。
  • 障害者自立支援法では、区分5(2番目に重い区分)と認定。
  • 男性は、介護保険法や障害者自立支援法による訪問介護サービスを受給していた。そのサービスは自らが経営する訪問介護事業所から行っていた。
  • しかし、実際は、車を運転し買い物に行くこともできた。この姿は市職員がビデオで撮影していた。なお、本人は「車の運転もできないし、免許も持っていない。」と主張している。


 bnn-s.comでは、容疑者が介護者の肩につかまり歩行している姿が放映されている。


 身体障害者手帳は、一度交付されたら、等級の変更は原則として行わない。最初の身体障害者認定が正確に行われたとすると、幸運にも回復したことになる。しかし、経過をみる限り、当初より重度の身体障害が存在しなかった可能性の方が高い。交通事故が原因となると、疾病利得もからむ。最初に身体障害者診断書を記載した医師が、実際の障害程度を見抜けなかったのかが気にかかる。
 昨年は、札幌市の耳鼻咽喉科医による聴覚障害診断書記載不正が報道された。*1札幌市民にとって、身体障害者診断が適正に行われているのか、不信感をもたらすような事件が相次いでいる。
 しかし、ここまで悪質な身体障害偽装事件は滅多にない。「車の運転もできないし、免許も持っていない。」と釈明しているが、そうなると、無免許運転の容疑でも告発しなければならない。

*1:bnn-s.com参照。