介護認定審査会委員の負担、飛躍的に増大

 昨日、介護認定審査会に出席した。2009年度版になって初めての要介護認定審査を行った。今までにない荒れた審査会となった。気がついた点を列挙する。

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# 一次判定精度は相変わらず低い
 介護認定開始当時より指摘されてきた事項が全く改善されていない。特に、運動機能の低下していない認知症者は低い認定のままである。悪性腫瘍末期や神経難病の患者も同様である。一方、重度要介護者は比較的適切な認定となっている。
 以前、『直接生活援助』に関する樹形モデルでは、中間評価項目の『生活機能』が重視されており、ADL要介助群(要介護1〜5)に関しては、ADLの階層性に着目すれば、要介護度は推定できると、本ブログで指摘した。一方、『BPSD関連行為』は一次判定ソフトでは判別困難であり、運動機能の低下していない認知症高齢者の要介護度が低く判定される可能性が残されている、とも述べた。認定審査会に参加した限りでは、一次判定ソフトは予想どおりの問題を抱えている。


# 認定審査会事務局が内容をまともに説明できない
 認定審査会が始まる前、市町村事務局より、認定調査の検証作業の説明があった。話している職員も内容を理解しているとは思えず、まともな説明になっていなかった。厚労省の朝礼暮改の影響を受け、準備不足のまま新制度に突入した結果である。認定審査会委員の苛立ちは著しく、市町村職員が批判の矢面に立たされるという気の毒な事態になっている。


# 認定審査会委員の負担が大幅に増大している
 欠陥一次判定ソフトの是正をするのが、二次判定の役割である。しかし、2009年度改定では、認定審査会の権限は大幅に制限された。基本調査ないし主治医意見書に記載されている内容を具体的に指摘しないと、一次判定の変更は不可能となっている。
 事務局機能が期待できない中、認定審査を手探り状態で行わざるをえない。審査会自体の討議時間も延長している。不適切な一次判定ロジックの変更、事務局機能の劣化などもあり、認定審査会委員の負担はこれまでの3倍以上となっている。


# 検証作業終了後に大量の認定引き下げが発生する恐れがある
 検証作業期間中、利用者の更新申請があった場合には、これまでの要介護度を適用することになっている。ローカルルールのようだが、検証作業が終わるまでの間は、新しい認定を通知せず、前回認定を連絡することになっている。申請者にとっては、認定審査会の結果が分からないまま、結果が通知されることになる。
 検証作業は最低でも約半年かかると予想されている。2009年度版要介護認定方式が全く変更されない場合、要介護度引き下げが一斉に通知されることになる。認定下方修正という都合の悪いデータが、ダムの決壊のように一気に吐き出される状況になる。利用者も介護事業者もパニックになる恐れがある。