介護保険一次判定のロジック(3) 間接生活介助とBPSD関連行為

 http://www.pref.mie.jp/CHOJUS/HP/kaisei/index.htm内にある、要介護認定介護認定審査会委員テキスト2009(4,863KB)の51〜59ページに樹形モデルの資料がある。今回は間接生活介助とBPSD関連行為の樹形モデルについて検討する。

  • 樹形モデルを用い、行為区分毎に算出
    • 直接生活介助
      • 食  事: 1.1分〜71.4分
      • 排  泄: 0.2分〜28.0分
      • 移  動: 0.4分〜21.4分
      • 清潔保持: 1.2分〜24.3分
    • 間接生活介助: 0.4分〜11.3分
    • BPSD関連行為: 5.8分〜21.2分
    • 機能訓練関連行為: 0.5分〜15.4分
    • 医療関連行為: 1.0分〜37.2分


 間接生活介助とBPSD関連行為の樹形モデルを第2層(一部第3層)まで示す。なお、各選択項目の後ろに、「能力」、「介助の方法」、「有無」のいずれで評価するのかを示す。また、中間評価項目は『』をつけて示す。中間評価項目の点数は最高100点、最低0点になるよう表示される。点数が高いほど介助が不要となるように配点されている。なお、各項目の冒頭の数字は中間評価項目群ごとにつけられた基本調査項目の番号である。


# 間接生活援助

  • 『2 生活機能』
    • 14.4以下
      • 「3-5 自分の名前を言う」(能力)できる: 2.2〜5.4分
      • 「3-5 自分の名前を言う」(能力)できない: 0.4〜3.6分
    • 14.5以上
      • 『4 精神・行動障害』95.8以下: 3.0〜11.3分
      • 『4 精神・行動障害』95.9以上: 2.7〜9.4分

 本樹形モデルはほとんど意味をなさない。どの枝分かれに入っても大差がない。最大でも11.3分にしかならない。しいて言うならば、生活機能が著しく低い群(14.4以下)では、役割がないため間接生活援助は不要となるように設計されているように見える。
 本来なら、間接生活援助には、第5群社会への適応に含まれる「5-1 薬の内服」、「5-2 金銭管理」、「5-3 日常の意思決定」、「5-4 集団への不適応」、「5-4 買い物」、「5-5 簡単な調理」が反映されてしかるべきである。しかし、間接生活援助樹形モデルからこれらの基本調査項目が見事に除外されている。
 日常生活活動(ADL)は自立していても手段的ADLは介助が必要な虚弱高齢者を判定することは、間接生活援助樹形モデルでは不可能である。虚弱高齢者の中から大量の非該当者が生まれることが予想される。


# BPSD関連行為(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia、認知症に伴う行動・心理症状を意味する)

  • 『4 精神・行動障害』
    • 81.0以下
      • 「1-1 麻痺の種類」(有無)ない: 7.6〜21.2分
        • 「3-1 意志の伝達」(能力)できる、ときどきできる: 7.6〜16.1分
        • 「3-1 意志の伝達」(能力)ほとんど不可、できない: 21.2分
      • 「1-1 麻痺の種類」(有無)いずれか一肢のみ、両下肢のみ、左上下肢あるいは右上下肢のみ、その他の四肢の麻痺: 6.7〜10.8分
    • 81.1以上
      • 『4 精神・行動障害』90.8以下: 6.2〜10.1分
      • 『4 精神・行動障害』90.9以上: 5.8〜7.6分

 BPSD関連行為樹形モデルは、間接生活援助よりさらに不可解である。『4 精神・行動障害』90.9以上という最も軽い群と他の群にほとんど差がない。しかも、本来ならBPSDと全く関係ない「1-1 麻痺の種類」が平然と顔を出している。『4 精神・行動障害』81.0以下とそれなりにあり、しかも麻痺がなく、意志の伝達がほとんで不可かできない者が最もBPSD関連行為で時間がかかることになる。臨床像が全くイメージできない。
 そもそも、BPSD関連行為は種類が多いことがより重症であることを意味しない。「4-1 被害的」、「4-2 作話」、「4-3 感情が不安定」、「4-4 昼夜逆転」、「4-5 同じ話をする」、「4-6 大声を出す」、「4-7 介護に抵抗」、「4-8 落ち着きがなし」、「4-9 一人で外に出たがる」、「4-10 収集癖」、「4-11 物や衣類を壊す」、「4-12 ひどい物忘れ」、「4-13 独り言・独り笑い」、「4-14 自分勝手に行動する」、「4-15 話がまとまらない」の中の一つしかなくても、その一つが重度の場合には介護の手間は著しく増える。
 運動機能の低下していない認知症高齢者の場合、要介護度が低くでることが、介護保険当初から指摘されている。改定版一次判定ロジックでは、欠陥が修正されずに残っている。