常識外れの要介護認定

 「認知症の人と家族の会」が新しい要介護認定に関し、異議申し立てをしている。

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 認知症の当事者や家族でつくる市民団体「認知症の人と家族の会」(高見国生代表理事)は3月9日付で、来年度に改定される要介護認定制度における認定調査項目の新たな判断基準について、「わたしたちの常識では考えられない内容が数多くある」とする意見書を厚生労働省老健局老人保健課長あてに提出した。意見書では、新たな制度が実施されれば、認定結果が利用者の実情と乖離(かいり)したものになりかねないと訴えている。


 新たな要介護認定における「買い物」の調査項目では、商品を選んで代金を支払うことができれば、無駄な買い物をしていても「できる(介助なし)」と判断されるが、高見代表理事はキャリアブレインに対し、「認知症の場合、買い物ができるからこそ介助が大変な場合がある。そういう点が考慮されていない」と語った。
 また「薬の内服」の項目では、飲む時間や量を間違えても、自分で飲んでいれば「自立(介助なし)」と判断されるほか、ボタンをちぎることのある人の上着をファスナーのものに替えたためにボタンをちぎらなくなった場合、「物や衣類を壊す」ことは「ない」と判断されることや、「意思の伝達」といった認知機能を調べる項目で、普段はほとんど質問に答えられなくても、調査時にたまたま答えられれば、「できる」とされることなどについて異議を唱えている。


 高見代表理事は新要介護認定について、「『物』に対して判断をするかのように感じる。人間が実際に暮らしていく上での判断になっていない」と語り、新制度によって介護保険制度そのものへの信頼が失われかねないとしている。


更新:2009/03/11 20:43   キャリアブレイン

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/21032.html


 http://www.pref.mie.jp/CHOJUS/HP/kaisei/index.htm内に、要介護認定認定調査員テキスト2009(1,922KB)がある。一例として、このPDFファイルの134〜136ページにある次のような記載を紹介する。

(1)調査項目の定義
 「薬の内服」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
 ここでいう「薬の内服」とは、薬や水を手元に用意する、薬を口に入れる、飲み込むという一連の行為のことである。


(中略)


対象者の状況 誤った選択 正しい選択と留意点等
現在、薬の内服はないが、処方された場合は、重度の認知症があるため、「薬の内服」は自分ではできない。 「3.全介助」 「1.自立(介助なし)」を選択する。薬の内服がない(処方されていない)場合は、介助自体が発生していないため、「1.自立(介助なし)」を選択する。
自分勝手に薬を飲んだり飲まなかったりする。 「2.一部介助」 「1.自立(介助なし)」を選択する。薬の理解を問う項目ではない。


 薬の内服は、代表的な手段的ADL(IADL)の項目である。薬の必要性を理解したうえで指示どおりに内服できるかということを一般的に評価する。しかし、新しい要介護認定では、いつの間にか「水を飲む」という次元まで難易度が引き下げられている。あまりにも常識外れの基準にあきれはてて物も言えない。