「介護者の有無」で介護認定審査会が紛糾する可能性あり
要介護認定改定に伴い、他者からの介助状況が調査項目に影響するようになった。「介助の方法」で判定する項目は、「介助が行われていない」と判断された場合には、「自立」を選択することになっている。
http://www.pref.mie.jp/CHOJUS/HP/kaisei/index.htm内に、要介護認定介護認定審査会委員テキスト2009 (4,863KB)がある。認定審査会の審査判定の基準について細かく記載されている。本テキストの「STEP1 一次判定の修正・確定」(17〜19ページ)に次のような記載がある。
(3)常時、介助を提供する者がいない場合(介助の方法で評価する調査項目)
常時、介助を提供する者がいない場合は、不足となっている介助に基づいて基本調査項目の選択を行うという例外的な措置をとります。この場合、選択される介助の方法は、現に行われている介助の方法ではなく、申請者の実態を観察した認定調査員の判断によって選択が行われます。
一方、「STEP2 介護の手間にかかる審査判定」(20〜27ページ)では、次のような記載がある。
4.住環境や介護者の有無
施設・在宅の別、住宅環境、介護者の有無を変更の理由にできません。
ただし住環境等が原因でコンピューターでは反映できない、介護の手間が具体的に発生している場合に、それを明らかにした上での変更は可能です。
同じテキスト内で、矛盾する項目が共存している。「STEP1 一次判定の修正・確定」では、「常時、介助を提供する者がいない場合」には例外的な対応をとると明記している一方、「STEP2 介護の手間にかかる審査判定」では、「介護者の有無を変更の理由にできません。」と記している。
後者の方が、介護保険創設当初よりある古い規定である。要介護認定は、環境因子に左右されてはならず、あくまでも本人の能力を評価するものだ、という原則を示したものである。一方、前者の規定は、今回の要介護認定改定時に新たに追加された。本人の状況だけではなく介助者も含めた介護状況を評価しようとしている。
「介護者の有無」に関する解釈が混乱し、介護認定審査会が紛糾すると予測する。特に、前回認定と比較して著しく要介護度が下がる事例で問題となる。
要介護認定とは、本人の介護にどの程度の手間がかかるかを評価すべきものである。介助者がいることを前提とし、他者からの介助状況を要介護認定に組み込むことは、介護保険創設時からの原則に反する。家族介護などの状況は、ケアマネジメントの段階で評価すべき事項である。介護熱心な家族がいることを理由に要介護度が下がることなど、あってはならない。