オバマの医療改革、児童向け医療保険の拡充から始まる

 オバマ米大統領の医療改革が始まった。

[ワシントン 4日 ロイター] オバマ米大統領は4日、低所得家庭の児童向け公的医療保険制度の対象に350万人の無保険児童を含める改正法案に署名した。ダシュル元民主党上院院内総務の厚生長官指名辞退という政権発足早々のつまずきはあったものの、選挙公約に掲げていた米国の医療保険システムの改革が一歩前進した格好だ。


 大統領は、下院本会議が290対135で328億ドル規模の同法案を可決した数時間後、ホワイトハウスでの署名式に臨んだ。上院は先週、同法案を承認していた。


 大統領は「しかるべき社会では、代償や交渉を前提としない一定の義務がある。児童の医療保険はそうした義務の1つだ」と述べた。*1


 ブッシュ前大統領は同様の法案について、増税を招き、企業や一般家庭に民間保険からの脱退を奨励するとして、2度の拒否権を行使していた。


 成立した法律は、対象となる児童数を現行の740万人から1100万人に増やすことを目的としており、財源は連邦たばこ税を現在の1箱39セントから1ドルに増税することなどで賄う。


 現行制度は、低所得者向け医療保険制度(メディケイド)の受給対象になるには所得が高過ぎるが、民間保険に加入する余裕のない勤労世帯を対象にしている。

オバマ米大統領、児童向け医療保険の拡充法案に署名


 オバマ大統領が最重要課題に掲げる医療保険改革は、児童向け医療保険の拡充から無事にスタートした。子どもの医療より民間医療保険企業への配慮を行ったブッシュ前大統領との違いを鮮明にした。財源とされたタバコ業界の反対も大きかったと推察する。
 市場原理に支配された米国医療制度は矛盾を拡大している。巨額な国庫支出、無保険者の増大、民間医療保険料の負担に喘ぐ企業などの問題を抱え、誰もが医療保険改革を望んでいるという状況になっている。現行システムで利益を得ている利害関係者との対立をオバマ大統領がどのように乗り越えていくか興味深い。
 オバマ大統領の言葉は心を打つ。英文でどのように表現されているのか興味がわき、Obama signs children's healthcare bill | Reutersを引用した。リズミカルな響きが心地よい。

*1:Obama signs children's healthcare bill | Reutersでは次のとおり。"In a decent society, there are certain obligations that are not subject to trade-offs or negotiations -- healthcare for our children is one of those obligations," Obama said.