リハ診療抑制の動きが出てきた理由

 http://www.inhcc.org/jp/research/news/niki/2009002001-niki-no054.html#に、対談:リハビリテーションの制度改革と診療報酬(二木立・渡辺邦夫『作業療法ジャーナル』2009年1月号(43巻1号):7-14頁)が転載された。リハビリテーション医療に対する二木立先生の見解を整理してまとめた。

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# リハ診療抑制の動きが出てきた理由
 2000年までは,コストシフティングを伴いつつリハの点数は相当引き上げられた.
 2002年以降は逆にリハ診療報酬抑制の動きが出てきた.リハ分野は小さいから実験的にやってみようと,かなり強引な改革が行われるようになった.

  • 2002年に患者一人当たりの合計回数の上限(制限診療)が導入された.
  • 2006年にリハ算定日数の上限が導入され,これは社会問題にもなった.また,理学療法,作業療法,言語聴覚療法の区別がなくなり,リハの理念に基づいて制度化されたリハ総合承認施設が疾患群別の施設基準に解体された.
  • 2008年の改定では,モデル事業も行わずに成功報酬(「質に応じた評価」)が導入された.その結果,回復期リハ病棟は二段階化された.

 理学療法作業療法・言語聴覚療法という狭い意味でのリハに限定しても,今は医療費の2%を超えている.回復期リハ病棟の入院料を含めると,さらに増える.医療費に対する割合が大きくなったために,ほかの医療分野と同じように医療費抑制の対象になった.
 普通,施設基準は簡単に変えないが,毎回のように全面的に変えるのはルール違反と言える.
 厚労省医療保険純化を目指している.今までは急性期,亜急性期,慢性期医療の全部を給付対象にしていたが,2000年から医療保険の給付対象を,入院については急性期と亜急性期医療に限定して,慢性期の医療は介護保険に移すという方向を鮮明にしてきた.リハの場合は,患者さんの治療期間がほかの医療分野に比べて長く,慢性期の比重が高いので,ターゲットにされた.
 急性期・亜急性期のリハ料は包括払いの対象に含めないとの方針は,既定事実化あるいは既得権化したと思う。


# リハニーズは今後も増大
 厚労省は,集中的な治療をすれば慢性期に移行する人が少なくなるから,総医療費は抑制できると期待している.しかし,医療経済学的に言えば,集中的な治療をすると1日当たりの単価が高くなるので,在院日数が短縮しても,総医療費が安くなることはない.
 患者さんのニーズに比べて供給が少ない分野の典型がリハ.ベッドの回転が良くなること(効率化)によって入院患者数が増え,トータルの医療費も増える.リハはまだまだニーズのほうが多く,しかも今後もニーズが増え続ける分野であることは間違いない.


# 質の評価・担保のためには専門職団体が自主的に行うべき
 原則的に言えば,医療の質の管理・担保は専門職団体が自主的に行うべき.しかし残念ながらリハ分野を含めてわが国の医療では,それが弱かったため,厚労省が代行するという形で規制強化をしてきた.
 医療の質には,「構造」でみる場合,「プロセス」でみる場合,「アウトカム」(最終的な結果)でみる場合の3つがある.

  • 1981年以降は「構造」でみる,つまりPT・OTが何人いるか,訓練室が何平方メートルか,どんな機械・器具があるかという評価だった.
  • 1980年代の後半,正確に言うと1988年の診療報酬改定から早期加算が付くようになったが,これが「プロセス」の評価である.
  • 2008年に科学的な根拠の裏づけがないまま回復度と自宅退院率の評価(成功報酬)が導入された.

 医療の効果は,最終的な「アウトカム」だけで判断できるわけではない.患者の病状にも左右されるし,あるいは家族的な条件や地域的な条件でも違う.
 医療の質をきちんと担保するためには,それよりも「プロセス」の評価を中心にすべきである.「プロセス」の管理までは医療者側がコントロールできる,すなわち標準化できる.それを基準として,あとは医療者の努力に応じて結果が出ることが学問的に確認されたものについては,部分的に「アウトカム」も考慮に入れるのが妥当だと思う.
 国際的にみても質に応じた支払いは,ほとんど外来医療と急性期入院医療のみを対象としており,今回のように亜急性期医療,リハ分野に一気に導入したのは世界初なのである.しかしこれは決して誇れることではなく,質の管理については,OT協会やPT協会,日本リハ病院・施設協会,全国回復期リハ病棟連絡協議会,リハ医学会等の専門職団体が協力してモデル事業を行うのが筋だと思う.幸いなことに,2008年の成功報酬の導入は正規の導入ではなく,試行(トライアル)である.2年間実施してみて,うまく結果が出なかった場合には廃止もありえる.


# リハ専門職の責務
 急性期から慢性期まで同一の職種が関わっていることが多いのがリハ専門職.リハの分野は,急性期と回復期の接点であると同時に,回復期と介護保険サービスの接点でもある.今後,慢性期のリハのうち,かなりの部分が介護保険に移行する可能性がある.そうするとサービスが分断されないように,リハ専門職が架け橋になるしかない.
 効果を測定する場合に客観的な指標だけでなくて,主観的な指標も相当組み込む必要がある.狭い意味での客観的指標だけでなく,主観的な指標,患者さんの満足度,家族の満足度等も重視すべき.自分たちがチームの一員として,リハ全体の効果を出しているということをもっと強調したほうがよいと思う.


 リハビリテーション診療報酬改定に関する二木立先生の見解は、本ブログでも数回とりあげているが、一貫してぶれがない。特に、回復期リハビリテーション病棟への成果主義導入への鋭い批判には勇気づけられる。
 「今後,慢性期のリハのうち,かなりの部分が介護保険に移行する可能性がある」という部分が気にかかる。介護報酬改定に連動し、2010年度の診療報酬改定が実施される。標準的算定日数上限を超えたリハビリテーション医療保険では認められなくなるおそれがある。