外傷後健忘症を軽症と報道した新聞、被害者を放置した運転手

 朝日新聞被害者女性、軽傷負い「私かも」より。

被害者女性、軽傷負い「私かも」
2008年10月12日


 9日夜、岩手町内の農業女性が「女性をはねた」と届け出たが、現場から被害者が消えていた事故で、11日午後2時10分ごろ、同町内の派遣社員女性(29)が「(はねられたのは)私かもしれない」と盛岡東署に連絡してきた。同署によると、女性は頭部打撲の軽傷だという。


 同署によると、女性は、事故について「ショックで記憶がとんでいる」と説明。自分がはねられたかどうかも含めて、事故当時の状況を覚えていない様子だという。


 現場付近に残された片方の靴や、車の破損部分と女性の傷がほぼ一致したことなどから、同署は、この女性がはねられた被害者と確認した、と説明している。


 女性は事故当時、現場近くにある勤務先の会社から歩いて帰宅途中だったという。はねられた後、自力で会社に戻り、同僚の助けで自宅に帰ったらしい。


 翌10日、何となく頭が痛かったため病院に行ったが、事故のためとは思わなかったという。同僚からの連絡などで、「事故に遭ったのは自分かもしれない」と思ったと説明しているという。


 「はねた」と届け出た農業女性がこれまでに同署に説明したところでは、9日午後9時43分ごろ、盛岡市玉山区の農道脇を歩いていた女性を背後からはねたという。1人で運転し、自宅に戻るところだった。事故直後、女性に「大丈夫ですか」と声をかけると、返事があったという。一度帰宅し、約1時間後に事故を届け出た。


 盛岡東署は10〜11日、岩手署と協力するなどして現場付近を捜していた。


 一歩間違うと重大な事態となったことを新聞社は全く理解していない。頭部外傷患者の場合、初期には意識があっても、じわじわと出血が頭蓋内に起こり、緊急手術を必要とすることがある。少なくとも、記事にした時点で外傷後健忘症が生じている。後遺症として高次脳機能障害を残す可能性がある。見出しに「軽傷」という表現を用いるのは誤っている。


 新聞社以上に非常識なのは、自家用車運転をしている女性である。交通事故を起こした場合、直ちに警察に連絡をするとともに、万が一のことを考慮し被害者に医療機関受診を勧めなければいけない。自家用車が破損するような人身事故であり、救急車を使っても非難されるような事例ではない。被害者を放置し自宅へ帰ったなど、信じがたい。ひき逃げ事故と判断され、送検されても仕方がない。