NHKスペシャル、「読字障害」放映

 本日、NHKスペシャル病の起源 第4集 読字障害 〜文字が生んだ病〜 が放映された。

 会話能力にも問題はなく、しかも眼に異常があるわけでもないのに、文章を読むのに著しい困難を抱える人たちがいる。文盲とは全く別の病、読字障害だ。この障害が見つかったのは、19世紀末の英国。数字の「7」は読めるのに「seven」を見せると読めない中学生が見つかった。当時は、まれなケースと思われていたが、英米では人口の10%、日本では5%もいることが判ってきた。最新の研究によって読字障害の人は一般の人と、脳での情報処理の仕方が異なることが明らかになってきた。通常、情報を統合する領域で文字を自動処理しているが、読字障害の人は文字処理をスムーズにできないのである。人類が文字を使い始めてわずか5千年、この時間の短さ故、脳は十分に文字を処理できるよう適応しきれていないのである。


 NHKスペシャルで紹介された読字障害は、英語ではDyslexia(ディスレクシア)と表記する。Dyslexiaは学習障害の一種であり、失読症難読症、識字障害などとも訳されている。英米では頻度が多く、トム・クルーズがDyslexiaを抱えていたことを告白したことも話題となった*1。国際Dyslexia協会、Dyslexiaについてに詳しい説明がある。ちなみに、この協会ではディスレクシアを発達性読み書き障害と表記している。


 なお、日本語で失読症と翻訳されている言葉には、AlexiaとDyslexiaの2つがある。Alexiaは、後天的な脳障害にて、言語機能のうち「読む」能力が選択的に障害された状態であり、失語症の特殊なタイプと考えられている。
 Alexia(失読症)、Aphasia(失語症)に使用されているA-は、否定の意味を示す接頭語である。Apraxia(失行症)、Agnosia(失認症)も全く同様で、これら高次脳機能障害に使用されている用語は、学問的にも行政的にもほぼ確立しており、「失〜症」と表現される。一方、Dyslexia(読字障害)やDysmetria(測定障害)で使われているDys-は、同じ接頭語でも困難であることを示しています。このため、日本語の訳語でも、「〜障害」と表記されることが多い。


 NHKスペシャルでは、読字障害の人の次のような特徴を示す。

 一方、読字障害の人には独創的な発想が出来る人や空間処理能力が高い人が多い。映画ジュラシックパークで恐竜博士のモデルになったモンタナ州立大学の考古学者ジャック・ホーナー博士も読字障害の一人。ホーナー博士は、恐竜の生態が鳥類に近い生き物であったことを証明し、恐竜研究に革命を起こした。しかしホーナー博士の読み書き能力は、小学3年生程度と言う。


 脳には得意分野があり、読字障害の人は字を扱うのが苦手なだけなのだということを、番組の中で指摘していた。
 日本では、読字障害についての本格的な取組みはまだ行われていないとのこと。アルファベッドと仮名・漢字さらにはローマ字を組み合わせて表記する日本語とでどのような違いがあるのか、が問題となる。読み書きができないことは決して知的能力が低いことではない。このことを、読字障害という特徴を持つ児童の教育をする時に忘れてはいけない。