酔っぱらいの頭部外傷は見逃す危険性がある

 Yahoo!トップニュースに次のような記事が配信された。

 女性の尻をけって前のめりにさせ、顔を壁に強打させて死亡させたとして、警視庁野方署は27日、傷害致死の疑いで、住所不定、無職、高橋昭彦容疑者(40)を逮捕した。同署によると、高橋容疑者は「暴力を振るった」と容疑を認めている。
 同署の調べによると、高橋容疑者は2日午後2時すぎ、東京都中野区松が丘の無職、青木悦子さん(53)の自宅アパートの室内で、青木さんとささいなことから口論になり、立ち上がろうとした青木さんの尻をけった際、青木さんが前のめりになって顔を壁に強打。鼻の骨を折り、急性硬膜下血腫により死亡させた疑いが持たれている。
 同署によると、2人は飲み仲間で、当時も2人で酒を飲んで酔っていた。青木さんは顔を強打した直後は意識があり、高橋容疑者から「救急車を呼ぼうか」と言われた際には「呼ばなくていい」と話したという。
 青木さんは5日、室内で鼻から血を流して死亡しているのをアパート管理会社の社員らに発見された。同署は司法解剖の結果などから、高橋容疑者の暴行と急性硬膜下血腫に因果関係があると判断した。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090627/crm0906271744014-n1.htm


 本記事は、「女性の尻をけって死亡させた」ということに焦点をあてて記載されている。しかし、問題はそこではない。
 昼間からお酒を飲んでいて、鼻の骨が折れていても病院には行かず、受傷後3日経ってから発見された、という経過である。推測でしかないが、独居のアルコール依存症者だったのではないか。
 急性硬膜下血腫の場合には、当初意識があり、血腫がたまってくる経過の中で意識障害が進行していく。アルコールを飲んでいると、意識障害や嘔吐などの神経症状が隠され、手遅れになる。階段から転げ落ちて頸髄損傷を起こしていても、気づかれないことがある。
 酔っぱらいを侮ってはいけない。泥酔者の外傷には慎重に対応する必要がある。