経団連、自分のことは棚に上げて従業員に「企業倫理徹底のお願い」

 昨日に引き続き、企業の社会的責任について。経団連企業倫理徹底のお願いより。

企業倫理徹底のお願い


2008年9月16日
(社)日本経済団体連合会
会長 御手洗 冨士夫

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日本経団連では、毎年10月を企業倫理月間と定め、会員各位に企業倫理の徹底をお願いしております。昨今、食品表示や製品・サービスの安全・安心確保に係る問題が多発するなど、企業行動に対する国民の関心が高まっております。


企業は社会や消費者からの信頼と共感に支えられており、企業倫理を確立することは経営トップの責務であります。不祥事の芽を早期に摘み取るためには、経営トップのリーダーシップにより、企業行動を常時点検し、必要な見直しを行うことが重要であります。会員代表者各位におかれましては、いま一度、事業活動全般の総点検に取り組んでいただきたく存じます。


また、会員各社におかれましては、行動指針の策定、担当部署の設置、企業倫理ヘルプラインの開設等、社内制度を整備され、ステークホルダーとの双方向の対話を進めておられることと存じます。引き続き、経営トップのリーダーシップの下、企業倫理徹底に向けた体制充実に努めるとともに、これを実効あるものにするため、従業員の意識改革を図っていただきたく存じます。


こうした観点から、この機会に、下記の事項に積極的にお取り組みくださるよう、改めてお願い申し上げます。


     記


1.事業活動全般の総点検
 (1) 取引・契約内容の総点検
 (2) 品質管理、消費者・顧客対応の総点検
 (3) 従業員や周辺地域に対する保安・安全体制の総点検
2.企業倫理への取組み体制の強化
コンプライアンス体制の強化〕
 (1) 各社独自の行動指針の充実
 (2) 企業倫理担当役員、担当部署等の充実
 (3) 企業倫理ヘルプライン(相談窓口)の機能強化
コンプライアンスの浸透と徹底〕
 (4) 経営トップによる企業倫理確立に向けた基本姿勢の社内外への表明と具体的な取組みに関する情報発信
 (5) 役員を含む階層別・職種別の教育・研修の充実
 (6) 企業倫理の浸透・徹底状況のチェックと評価
〔不祥事が起きた場合の対応〕
 (7) 適時的確な情報開示、原因の究明、再発防止策の実施、ならびにトップ自らを含めた関係者の厳正な処分


以上


 耳慣れない言葉が並んでいる。
 ステークホルダーについては、昨日のエントリーでも取り上げた。野村総合研究所経営用語の基礎知識に説明がある。企業活動を行う上で関わるすべての利害関係者、すなわち、地域住民、官公庁、研究機関、金融機関、従業員、取引先企業、消費者、国際社会などを指し示している。
 企業倫理ヘルプラインについては、クォリティテクノロジーサイト、キーワード一覧に説明がある。社員やグループ社員が、企業倫理(法令遵守)に違反するような重要情報を、Eメールや電話などで直接通報できる内部通報制度の一つと記載されている。関連法規として、2006年4月施行の「公益通報者保護法」がある。


 本文第3段は、自分のことは棚に上げて、と思わず言いたくなる文章である。内部告発者に対して報復としか思えない対応をする企業風土は克服されているのだろうか。ステークホルダーの中には従業員も含まれているにも関わらず、「従業員の意識改革」とはどういうことか。派遣労働、長時間労働の常態化が進んでいることを経団連トップは全く反省していない。次のように書き換えてみた。


また、会員各社におかれましては、行動指針の策定、担当部署の設置、企業倫理ヘルプラインの開設実効性のある内部通報システムの整備等、社内制度を整備され、ステークホルダー消費者(顧客)、従業員、株主、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政機関など、企業を取り巻くあらゆる利害関係者との双方向の対話を進めておられることと存じます。引き続き、経営トップのリーダーシップの下、企業倫理徹底に向けた体制充実に努めるとともに、これを実効あるものにするため、従業員の経営トップ自らの意識改革を図っていただきたく存じます。