回復期リハビリテーション病棟入院料Iへの誘導政策

 m3com「医療維新」2008年2月29日の記事より、回復期リハビリテーション病棟に関する厚労省保険局医療課長・原徳壽氏の発言を引用する。インタビュアーは橋本佳子(m3.com編集長)である。

 −− 回復期リハビリテーションの入院料には、「他の保険医療機関への転院した者等を除く者の割合が6割以上」という要件、つまり在宅復帰を目指した成功報酬的な考え方が導入されています。


  今後、後期高齢者が増加していく中で、どんな疾患が問題になるかという視点から考えた点数です。癌は患者数自体は多いのですが、長期入院にはなりません。これに対して、大きな問題になるのが脳卒中です。


  今回、脳卒中対策として、「超急性期脳卒中加算」を新設し、t-PA(アルテプラーゼ)を投与する体制を整えました。また、「地域連携診療計画」(地域連携クリティカルパス)の対象疾患に、脳卒中を加えました。


  その中間を埋める回復期リハビリを充実させ、療養病床ではなく、自宅あるいは居住系の施設に退院できるようにしてほしいわけです。回復期リハビリをしっかりやっていただきたいという意味で、今回の点数を設定しました。ただし、成功報酬的な点数を入れると、「軽症の患者だけを入院させる」との懸念もありますので、「新規入院患者のうち1割5分以上が重症な患者であること」という要件を入れています。


  幸い、今、理学療法士作業療法士の養成数は年々増え、回復期リハビリに携わるスタッフは充実してきました。確かに今回の点数は決して高いものではありませんが、この辺りは今後の課題であり、積極的に取り組んでいただきたいと思います。


 原徳壽氏は、「診療報酬改定と後期高齢者医療制度」というシンポジウムで次のような発言をしている。詳しくは、診療報酬改定と後期高齢者医療制度をご覧いただきたい。

 平成18年度に医療制度改革が行われた。安心・信頼の医療の確保と予防の重視、医療費適正化の総合的推進、超高齢社会を展望した新たな医療保険制度の実現の3つの大きな目標がある。病院という医師や看護師を必要とするところで、あまり医療の必要度がない人を診るのは非常に高価につく。病院という形態でのサービスの提供は控えるようにしなければ適正化は進まない。そのため、療養病床を少し減らそうということになった。


 厚労省にとっての回復期リハビリテーション病棟の意義は、「療養病床ではなく、自宅あるいは居住系の施設に退院できるように」するための意義しかないことが露骨に示されている。療養病床や老健施設など医師が看護師が常駐しているところだと医療費や介護費が高くつく。自宅あるいは居住系の施設だと、公的医療費は削減できる。そのために回復期リハビリテーション病棟関係者は努力して欲しい。
 医療費削減しか頭にない厚労省幹部の姿勢が示されている。