リハビリテーション1ヶ月あたり単位数
2006年度診療報酬改定より、疾患別リハビリテーション料算定日数上限が設定された。このため、長期間リハビリテーションが必要な患者でも、算定日数を超えるとリハビリテーション医療が打ち切られるという例が続出した。
厚生労働省管轄の高齢者リハビリテーション研究会は、平成16年1月に「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」という報告書をまとめた。本研究会には、著明なリハビリテーション医が委員として参加している。2006年度診療報酬改定および介護報酬改定に、この報告書の強い影響が伺える。介護保険における介護予防事業の創設も、この報告書が土台となっている。
「あるべき方向」の中に、リハビリテーション診療報酬算定日数上限設定の根拠になる記述がある。例えば、「長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーション医療が行われている場合がある」、「脳卒中モデルにおいては、発症直後からリハビリテーションを開始し、自宅復帰を目指して短期的に集中してリハビリテーションを行った後に、自宅復帰後は日常的に適切な自己訓練を行うとともに具体的な課題やさらなる目標が設定された時に、必要に応じて、期間を定めて計画的にリハビリテーションを行うことが基本となる。」などである。
高齢者リハビリテーション研究会自身は、様々なデータに基づき、リハビリテーション医療のあるべき姿をまとめた。しかし、「長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーション医療が行われている場合がある」という記述の根拠になるデータは報告書の中にはない。
中医協診療報酬基本問題小委員会(平成19年11月30日資料)内に、リハビリテーションについて資料(診-2-1)というPDFファイルがある。内容を引用する。
# リハビリテーションの診療実態に係る調査
1 目的
平成19年3月14日に中央社会保険医療協議会総会において諮問・答申された「リハビリテーション料の見直し」について、見直し後の影響を把握し、平成20年度診療報酬改定のための資料を得ることを目的に実施した。
2 調査の内容
平成19年度の見直し後のリハビリテーションの実施状況について、診療報酬明細書の算定状況について調査した。
3 調査対象
対象は10都道府県の174施設、対象患者は7,635人(男性3,466人、女性4,169人、平均年齢70.9歳)であった。
本調査の中で最も数が多かったのは、脳血管疾患等リハビリテーション料Iの2,443人である。リハビリテーション1ヶ月あたり単位数を産出した(2年超以降省略)。
人数 | 総単位数 | 1人あたり単位数 | |
---|---|---|---|
30日以下 | 265 | 5,085 | 19.2 |
31-60日 | 310 | 12,425 | 40.1 |
61-90日 | 200 | 11,740 | 58.7 |
91-120日 | 160 | 10,235 | 64.0 |
121-150日 | 139 | 6,700 | 48.2 |
151-180日 | 100 | 4,100 | 41.0 |
181日-1年以内 | 184 | 4,788 | 26.0 |
1年超-2年以内 | 182 | 3,523 | 19.4 |
最も1人あたり単位数が多いのは91-120日である。30日以内の早期患者は実施単位数が少ない。また、疾患別リハビリテーション料算定日数上限を超えた181日-1年以内の患者でも月あたり26単位リハビリテーションを実施している。なお、リハビリテーション医学管理料は、132名6.3%の算定率だった。
厚労省は、この結果を受け次のような考察をしている。
# 考察
(1) リハビリテーション医学管理料
1施設あたりでみると、リハビリテーション医学管理料の算定患者数は0〜5.5%であり、介護保険への移行が難しい場合等の患者について、一定程度算定されていた。
(2) 平成18年度改定において目指していた、早期リハビリテーションへの重点化については、今回の調査では、早期における実施総単位数が多い傾向が見られ、一定の成果があるのではないかと考えられる。
(3) しかしながら、脳血管疾患リハビリテーションや運動器リハビリテーションでは、実施総単位数が最大となるのは算定開始後31〜60日であり、0〜30日での実施総単位数は若干少ない傾向にあると考えられる。さらに発症早期からのリハビリテーション実施を促進する必要がある。
発症後0〜30日での1人あたりリハビリテーション実施単位数が少ない。これは、疾患別リハビリテーション料導入と早期加算廃止の影響で、急性期病院がリハビリテーションを行う経営的メリットを感じなくなったためと推測する。今回の診療報酬改定で、早期加算の復活と脳血管疾患等リハビリテーション料の格差是正(脳血管疾患等リハビリテーション料をIからIIIの3つに増やす)により、早期リハビリテーションを行うインセンティヴが働くことを期待する。
一方、疾患別リハビリテーション料算定日数上限超でも、1人月あたり19.4〜26.0単位のリハビリテーションを実施している。それに対し、今回認められたのはわずか月あたりわずか13単位である。しかも、算定日数上限を超えたものは選定療養の対象とするとまで述べている。
今回の改定は、長期間リハビリテーションを必要とする患者にとって、より厳しいものになったというしかない。