疾患別リハビリテーション料算定日数上限除外疾患

 疾患別リハビリテーション料算定日数上限除外疾患について再検討する。


 日本リハビリテーション医学会報告平成19年度リハビリテーション料に関連する社会保険診療報酬等の改定について(2007年5月)を引用する(一部参考資料を追加)。

# リハ算定日数上限の除外対象患者


(改善の見込みがある場合に除外対象となる患者)

  • 失語症,失認および失行症の患者
  • 高次脳機能障害の患者
  • 重度の頸髄損傷の患者
  • 頭部外傷及び多部位外傷の患者
  • 慢性閉塞性肺疾患COPD)の患者(2007年4月より追加)
  • 心筋梗塞の患者(2007年4月より追加)
  • 狭心症の患者(2007年4月より追加)
  • 回復期リハ病棟入院料を算定する患者
  • 難病患者リハ料に規定する患者(先天性又は進行性の神経・筋疾患の者を除く.)
  • 障害児(者)リハ料に規定する患者(加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病の者に限る.)
  • 上記に準じて必要と認められる場合(2007年4月より追加)


(治療上有効であると医学的に判断される場合に除外対象となる患者)

  • 先天性又は進行性の神経・筋疾患の患者
  • 障害児(者)リハ料に規定する患者(加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾患の者を除く.)


 難病患者リハ料に規定する患者には、次の疾患が含まれる。

 ベーチェット病多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、スモン、筋萎縮性側索硬化症、強皮症、皮膚筋炎及び多発性筋炎、結節性動脈周囲炎、ビュルガー病、脊髄小脳変性症、悪性関節リウマチ、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症パーキンソン病)、アミロイドーシス、後縦靭帯骨化症ハンチントン病モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)、ウェゲナー肉芽腫症、多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群)、広範脊柱管狭窄症、特発性大腿骨頭壊死症、混合性結合組織病、プリオン病、ギラン・バレー症候群黄色靭帯骨化症、シェーグレン症候群、成人発症スチル病、関節リウマチ、亜急性硬化性全脳炎


 障害児(者)リハ料に規定する患者には、次の疾患が含まれる。


 脳血管障害は、「障害児(者)リハ料に規定する患者」において、「神経障害による麻痺及び後遺症」に位置づけられている。回復期リハ病棟入院料が「算定する患者」になっているのに対し、難病患者リハ料と障害児(者)リハ料は「規定する患者」となっている。これは、両リハ料を実際に算定しなくても、対象患者として表に規定されていれば良いという意味である。
 2006年度診療報酬改訂時、この暗号もどきの表現に悩まされた。最も患者数が多い脳血管疾患は、当初算定日数上限除外の対象となっていないと誰もが判断した。反対運動の盛り上がりの中で、「神経障害による麻痺及び後遺症」の中に入っているという官僚の苦し紛れの回答が生み出された。


<追記> 2013年9月9日

 疑義解釈資料の送付について(その5)平成18年4月28日に次のような記載がある。

(問38)脳卒中により神経障害を来たし麻痺や後遺症のある患者については、障害児(者)リハビリテーション料に規定する「神経障害による麻痺及び後遺症」に含まれるため、算定日数上限の適用除外となるのか。

(答)脳卒中等の脳血管疾患により麻痺や後遺症を呈している患者であって、治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合であれば対象となる。なお、治療の継続により状態の改善が期待できるか否かについては、定期的に客観的な評価を行った上で医師が適切に判断すること。

<追記終了>


 日数上限を超えてのリハ料算定を行う場合の注意点は以下のとおりである。

(1) 先に述べたように除外対象疾患の一部の患者で,『治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合』には,算定日数の上限を超えて疾患別リハ料を算定することが可能となった.しかしこの場合,『3カ月に1回以上のリハ実施計画書の作成』が求められ,その内容には『これまでのリハの実施状況,前月の状態と比較した当月の患者の状態,今後のリハ計画,FIM・Barthel Index・関節可動域などの数値を示した継続理由など』の記載が必要である.さらに毎月の『診療報酬明細書の摘要欄に同様の内容を具体的な数値データとともに記載する』ことも,併せて求められている.
(2) さらに算定点数の逓減制が導入され,『心大血管疾患リハ料では治療開始日から121日以降,脳血管疾患等リハ料では発症日等から141日以降,運動器リハ料では121日以降,呼吸器リハ料では治療開始日から81日以降は,逓減された点数を算定』することとなった.
(3) この逓減された算定点数は,除外対象疾患にも適用される.数値指標を用いた継続理由等をリハ実施計画書に書く必要のない場合は,『先天性又は進行性の神経・筋疾患の患者及び障害児(者)リハ料に規定する患者(加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾患の者を除く.)』だけである.また,期限を超えても点数逓減されないのは,『児童福祉法第43条の3に規定する肢体不自由児施設又は同法第27条第2項に規定する国立高度専門医療センター及び独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関』の通園者と外来患者だけである.


 リハを長期実施する手段としての医学管理料の新設について、次のように記載されている。

(1)疾患別リハ医学管理料とは?
 今回の再改定では,従来の『疾患別リハ』に加えて『疾患別リハ医学管理料』が新たに設定された.この『医学管理料』は低額の算定に抑えられている.反面,発症日等からの日数上限や『状態の改善が期待できると医学的に判断される場合』という必要条件もないため,介護保険の対象にならない障害者や介護保険の対象者であっても地域的事情でサービスが不十分なため維持期リハを受けられない事情を持つ多くの患者を対象とすることができる.
 疾患別医学管理料では,『状態の改善』を算定の必要条件にしていないため,作成すべき書類も簡便化されている.3カ月に1度のリハ実施計画書には,『これまでのリハの実施状況,前月の状態と比較した当月の患者の状態,今後のリハ計画等』までの記載で充分とされ,数値の提示は求められない.


(2)疾患別リハ料と疾患別リハ医学管理料との移行と実施は?
 基本的に『医学管理料』を算定できるのは,『リハ料』をも算定できる保険医療機関に限られ,『医学管理』のみを行う保険医療機関は想定されていない.その一方で,疾患別リハ料を算定したことがない患者でも疾患別リハ医学管理料は算定できる.しかし,維持期の疾患別リハ管理料を算定した後に,疾患別リハ料を算定することは原則できない.
 リハ医学管理料は,月1〜3日の実施に対しては440点(心大血管・脳血管I)・340点(運動器・呼吸器I)が算定され,4日以上の実施ではさらに440点・340点を算定することができる.つまり通常の疾患別リハであれば,月4単位(週1回・1単位)を施行する程度の点数が配分されており,さらに『1日の実施時間は1単位以上』と規定されている.


 医療保険介護保険のリハ併用禁止等について、次の記載がある。

 疾患別リハ又は疾患別リハ医学管理をある保険医療機関で実施している場合には,他の保険医療機関で同一の疾患等に係る疾患別リハ料又は疾患別リハ医学管理料は算定できない.
 また,同一の疾患等において医療保険による疾患別リハ料を算定するリハを行った後,介護保険によるリハに移行した日以降は,医療保険における疾患別リハ料は算定できない.および,介護保険によるリハを行った月においては,医療保険によるリハ医学管理料も算定できないことが明記された.


 最後に日本リハビリテーション医学会としての見解が記載されている。

日本リハビリテーション医学会の平成19年4月1日付けリハビリテーション料再改定についての見解


1. 日本リハビリテーション医学会は,平成18年11月21日付で,4項目からなる「平成18年診療報酬改定におけるリハビリテーション料に関する意見書」を発表し,厚生労働省に提出した.
2. 今回の改定は,上記意見書の中の算定日数制限に関する問題に関して,1)除外対象疾患が拡大されたこと,2)進行性の神経・筋疾患等において,「改善の見込み」をリハビリテーション継続の要件から外したこと,3)介護保険非該当者および現状で介護保険により適切なリハビリテーションが受けられていない人たちに対し,「リハビリテーション医学管理料」を新設したこと,の3点について,一定の前進があったものと評価している.
3. ただし,診療報酬の逓減制が導入されたことにより,算定日数上限以降にも,さらなるリハビリテーションの継続を必要とする人たちを多く受け入れている施設(*註)では,大幅な減収が予想される.その結果として,必要なリハビリテーションの提供が困難になることが危惧され,この点についての早急な検証と見直しが必要と考える.
4. 今回の改定で新設された「リハビリテーション医学管理料」の点数および回数設定の妥当性についても,今後,十分な検証を行う必要があると考える.
5.今回の改定は,あくまで算定日数制限に関するものであり,リハビリテーション医療の一層の発展のためにも,今後,疾患別リハビリテーション体系に関する問題,回復期リハビリテーション病棟料の問題などについても引き続き検討を加え,必要な改定を具体化していくべきであると考える.


 * 註:現時点で,1)肢体不自由児施設,重症心身障害児施設,通園施設など小児のリハビリテーションに特化した施設(**註の註),2)脊髄損傷,外傷性脳損傷などの重度障害者のリハビリテーションを主に提供し扱っている施設,3)難病に特化した施設,4)高次脳機能障害者のリハビリテーションに力を入れている施設,5)言語聴覚療法を中心に行っている診療所などにおいて,逓減制導入による大幅な減収が予想されている.
** 註の註:『児童福祉法第43条の3に規定する肢体不自由児施設又は同法第27条第2項に規定する国立高度専門医療センター及び独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関』の通園者と外来患者においては,期限を越えても点数逓減されないこととなった.


 中医協資料(2008年1月30日)記述内容を再度提示する。

 疾患別リハビリテーション医学管理料は廃止し、各疾患別リハビリテーションの算定日数上限を超えたものについては、1ヶ月当り13単位まで算定可能とする。(算定日数上限を超えたものについては、選定療養として実施可能。)


 2種類の解釈が可能である。
(1)疾患別リハビリテーション医学管理料廃止の代わりに、「1ヶ月当り13単位まで」という上限を設ける。これまでの疾患別リハビリテーション算定日数上限除外規定は維持する。
(2)疾患別リハビリテーション医学管理料廃止だけでなく、疾患別リハビリテーション算定日数上限除外規定という概念自体をなくす。全て「1ヶ月当り13単位まで」という上限で運用する。


 甘い期待かもしれないが、前者であることを望みたい。だが、リハビリテーション医学管理料が実質月4単位分しか算定できなかったことと比べ、厚労省にしては大判振る舞いすぎる。疾患別リハビリテーション算定日数上限除外規定を厳しくし、バランスをとるのではないかという気がする。