成果主義をめぐる論議(続き)

 CBニュースにおいて、リハビリ成果主義、在宅復帰率などで(2007年12月3日)という記事が掲載された。成果主義に関わる部分を引用する。

 現在の施設基準のうち、医師の専従要件を廃止して平均的な点数を1,680点よりも引き下げ、回復期病棟ごとに「質の評価」を行って点数格差を付ける。
 質を評価する基準として厚労省は、(1)在宅復帰率、(2)重症患者の入院率、(3)重症患者の改善率の3つを示している。
 具体的には、(1)「居宅等」に退院する患者が一定の割合以上いること、(2)重症な患者を受け入れていること、(3)重症な患者の退院時の日常生活機能が一定程度以上まで改善されていることとしている。


 在宅復帰率については、次のような記載がされている。

 「在宅復帰率」を判断する上で重要となる「居宅等」について、保険局の原徳壽医療課長は「自宅のほか有料老人ホームなどの居宅系施設を含んでいい。しかし、老健はリハビリを重視した中間施設なのでこれを含めるのはいかがなものか。回復期でリハをして老健でもリハをするのはつながりとしてスムーズでなく、老健を渡り歩くのは本来の姿ではない」と述べ、在宅復帰を強調している。
 厚労省が別添で示した参考資料によると、退院後の行き先が自宅と有料老人ホームを合わせて75.1%であるため、在宅復帰率を70〜75%に設定することが予想される。
 「居宅等」の具体的な範囲は、各施設の目的を考えながら今後検討していくという。


 原徳壽医療課長の発言には、以下に示すような2つの大きな問題点がある。

  • 「在宅復帰率」の具体的範囲が著しく狭められる可能性が高いこと。
  • 厚労省の示した参考資料が全国の回復期リハビリテーション病棟の実態を反映していないこと。


 「在宅復帰率」は、亜急性期入院医療管理料の施設基準でも規定されている。亜急性期入院医療管理料では、「退院患者のうち概ね6割以上が居宅等へ退院すること。」となっている。さらに、「居宅等とは、居宅、介護老人保健施設及び介護老人福祉施設等をいい、同一医療機関の当該管理料に係る病室以外への転室及び他医療機関への転院は含まない。」という記載がされている。
 原徳壽医療課長が述べたことがそのまま実行されるとなると、亜急性期入院医療管理料と比べ、回復期リハビリテーション病棟の「質の評価」をする基準はかなり厳しいものとなる。居宅等への復帰率が6割→7割へと引き上げられる一方、居宅等の範囲から介護施設が除外される。


 厚労省の示した参考資料は、中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会平成19年11月30日資料から手に入る。リハビリテーションについての「資料(診ー2ー3)」をクリックするとPDFファイルがダウンロードされる。
 この参考資料の出典は明示されておらず、調査数はわずかに189名である。全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会は、毎年9月に調査を行い、1万名前後のデータを集めている。その結果出された自宅退院率65.3%という数字と比較すると、厚労省の参考資料にある75.1%という数字は、全国の回復期リハビリテーション病棟の実態から著しく解離している。仮に「在宅復帰率」70%というラインが設定されると、6割前後の回復期リハビリテーション病棟が「質の評価」の適応にならず、低い診療報酬に甘んじることになる。