「安心と希望の医療確保ビジョン」

 医師不足問題に対する厚労省の対応の続報。47ニュース(共同通信)、医師養成数増員へ 厚労相の私的懇談会が報告書より。

医師養成数増員へ 厚労相の私的懇談会が報告書


 医師不足などの抜本的な解決策を検討してきた舛添要一厚生労働相の私的懇談会「安心と希望の医療確保ビジョン」は18日、勤務医の負担緩和には医師総数を増やす必要があるとして、大学医学部の定員削減方針を撤回し、医師養成数を増やすと明記した最終報告書をまとめた。


 ただ現段階で予算の裏付けがないため、定員増の時期や規模は言及しなかった。


 舛添氏は同日の記者会見で「養成する大学や教官の数が足りなければ前に進まない。諸条件を考えた上で一定の数字を出したい」と述べ、関係省庁と調整して秋からの来年度予算編成過程で具体的な増員数などを確定させる考えを表明した。


 政府は将来の医師過剰懸念から1997年に「医学部定員の削減に取り組む」と閣議決定し、医学部定員はピーク時(81‐84年)の8280人から、2007年には約7600人に減少している。


 報告書はまた、04年度に義務化された臨床研修制度によって都市部の民間病院などでの研修希望者が増え、医師の偏在が加速したとの指摘を踏まえ、制度の見直しが必要と指摘した。


 続いて、時事ドットコム医師数算定見直しへ=麻酔科医の規制も緩和−医療確保で「ビジョン」・厚労省より。

2008/06/18-19:21 医師数算定見直しへ=麻酔科医の規制も緩和−医療確保で「ビジョン」・厚労省


 厚生労働省は18日、医師不足解消に向け中長期的な展望を示した「安心と希望の医療確保ビジョン」をまとめた。地域や診療科で偏っている医師の配分を改善するため、医療機関の医師配置に関する基準を見直す。麻酔科医に関する規制も緩和する。
 「ビジョン」ではまず、不必要に医師を抱えている病院を減らすため、「外来患者40人に医師1人」などと医療法で定められた標準医師数の算定方法を見直す。
 また、麻酔科医不足に対応するため、厚労省が許可した「麻酔科標榜(ひょうぼう)医」がいなければ、麻酔科を診療科目として掲げることができない規制を緩和する。
 さらに、都市部に医師が集中する一因になった2004年導入の新臨床研修制度を見直し、病院ごとの新人医師の受け入れ数について適正化を図る。地域医療に貢献する研修病院は積極的に評価する。


 2008年1月7日に「安心と希望の医療確保ビジョン」第1回会議が開かれた。「安心と希望の医療確保ビジョン」第1回会議議事録より、舛添厚生労働大臣の発言を紹介する。

 皆さんこんばんは。本日は、お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。
 私が昨年8月に厚生労働大臣に就任して以来、最初に奈良県で妊産婦のいわゆるタライ回しという事件が生じました。この医療体制をどうするかということ、特に産婦人科医師の不足ということで、大変国民的な問題になっております。
 昨年5月から、緊急の医療体制整備を政府与党でしっかりやってきておりますが、長期的にどうするのかということについての議論があまりなされていない。
 特に医師の養成というのは10年計画で考えねばなりませんが、医師が余っていると言われていながら、片一方で産婦人科の医師がいないという現状であり。少し長期的なビジョンを打ち立てることが必要だろうと思います。
このため、国民に安心を与える、そして将来に希望を与える、安心と希望の医療ビジョンということで先生方にお集まりいただきました。そして今後、コアの先生方を中心にいろいろなゲストをお呼びし、例えば歴史的観点から見て、ヨーロッパと比べたらどうだろう、日本の江戸時代と比べたらどうだろう、という人文社会科学の観点もそこに入れてみたいと思っております。
 もう1つは、机上の空論にしないために、現場を歩いてみたいということです。私も、就任してすぐに千葉県の亀田総合病院に行って、緊急医療体制の実態を見ました。消防署の救急車の出動の体制も見てまいりました。そういうことも含め、現場を少し見て、現場からの状況判断ということもこれに加え、とにかく全くフリーに自由闊達な議論を皆さん方にしていただいて、国民が本当に安心できる医療体制を、10年、20年の計画で作りたいと思っております。
 今年の春4月ぐらいを目処にし簡単な報告書をまとめて、こういう方向で日本の医療体制を国民が安心できるものにするという新しい医療ビジョンを掲げ、ます。年金と並んで医療の問題というのは、政府に対する信頼感、そして肝炎の問題はなんとか決着しそうなところまで漕ぎ着けましたけれども、生命を大切にするという厚生労働行政の原点をしっかり掲げ、それを国民の皆さん方に信頼していただける政策にする。
 そのように、非常に重要な長期ビジョンを皆さん方の力をお借りし、そして国民的な議論のたたき台として作り上げたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。本日は本当にありがとうございます。


 別に江戸時代と比べる必要はないとは思う。また、6月18日に実施された第10回会議の資料および議事録が明らかになっていないため、「安心と希望の医療確保ビジョン」の詳細は不明である。時事ニュースの記載、「不必要に医師を抱えている病院」とは、いったいどういう病院を指し示しているのか、不安も覚える。
 いずれにせよ、「医師は不足していない、偏在しているだけだ」という主張が撤回され、医師養成増に舵を切ったことは間違いない。「医師不足」問題が歴史的なターニングポイントを迎えている。