国保窓口負担などの減免措置、宮城では打ち切り、岩手では継続

 東日本大震災被災者に対する国民健康保険後期高齢者医療制度介護保険利用料の減免措置は、宮城県では打ち切り、岩手県では継続となった。

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 宮城県では、他の被災地と比べて対象者が多い。負担を肩代わりする県や各市町村の財政負担が重く、一斉に打ち切る方針。医療費だけでも、対象者は昨年10月末時点で約18万人に上り、来年度も継続するためには年間約30億円が必要になるという。


 岩手県は4月以降も、国保後期高齢者医療制度介護保険の加入者に対する医療費や利用料の減免措置を続ける。2013年度一般会計当初予算には4〜12月の関連費約4億7000万円を盛り込んだ。


 福島県は、各市町村の意向を尊重し、継続する自治体には財政負担を続ける。新地、相馬、南相馬の3市町は、津波の被災者らの生活再建が進んでいないとして、国保については、来年3月まで自己負担免除を続ける予定。

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=75269


 この件に関し、宮城県の村井知事は、記者会見で次のように述べている。岩手県の対応に関する報道に言及している部分を赤字で示す。

◆Q
 被災者を対象とした医療費の窓口負担や介護サービス利用料の減免措置について、今後も減免継続をするのかどうか、その辺どう考えているか。


■村井知事
 これは議会でずっと答弁しておりますように、今年度(平成24年度)いっぱい、8割国が持って、2割は県が持っていました。岩手県福島県は8割国が持って、1割県が持って、1割分は基礎自治体が持っているということであります。なぜそうしたかというと、宮城県はあまりにも被害が大きくて、被災の地域格差が非常に大きいので、1割市町村負担としてしまいますと、被害が大きな自治体、石巻東松島、北のほうですね、仙台も含めてということになるかもしれませんが、恐らく財政がもたないだろうということで、全て県が持ったということであります。この財源がもう枯渇しておりますので、これ以上継続は難しいというのが私どもの考えでございました。市町の考え方というのも聞いた上で判断をしていますので、基本的には考え方に変更はございません。今後、市町がどう考えているかということをあらためてもう一度最終的に聞いてくれということは部長のほうに今日指示をしておりますが、変更はありません。
 なお、これについては、岩手県と福島県はやる、宮城県はやらないというふうな報道がありますけれども、岩手県の中でやる基礎自治体もある、福島県の中でやる基礎自治体もあるということでございまして、岩手県、福島県が全ての市町村でやるわけでは決してございませんので、報道されるときはぜひ誤解のないように報道していただきたいと思っております。
 ちなみに、例えば国民健康保険ですが、福島県では原発関連の9つの町村を除く50の市町村の中で、16の市町村で平成24年度は実施をしております。平成25年度は、原発関連の9つの町村を除く50の市町村のうちの3つの市町で実施を予定しているということでございます。もしかしたら増えるかもしれませんけれども、私が今持っている資料では、結局福島県では3つの市町で実施すると(いうことです)。それは1割分その市町が持つということですね。
 岩手県は、平成24年度は全市町村で実施をしております。平成25年度は33の市町村のうちの27の市町村で実施する見込みだということでございます。決して全ての市町村でやるというわけではない(ということで)、つまり1割分の負担をどうするかという問題ですね。
 宮城県は、それをやりますと恐らく被害の大きな自治体は財政があっという間に破綻してしまうと思います。1割分だけ持ってくれと、これは無理です。従って、やるならばやはり全部県が持たないといけないということになるのですが、それはとてもじゃないですけれども、今の県の財政状況では不可能です。震災があって1年半は10割国が持っていたんですね。今年度から8割に下げたということで、もう一回10割に戻してくれという要望は引き続きしていきたいと思っています。
(注)知事発言において、福島県での国民健康保険の医療費減免措置について、「19の市町村で平成24年度は実施」を「16の市町村で平成24年度は実施」に訂正しています。

宮城県知事記者会見(平成25年3月18日) - 宮城県公式ウェブサイト

◆Q
 先週(18日の知事記者会見)、被災者の医療費の免除についての質問で、市や町にあらためて最終的に考えを聞きたいという話だった。それを踏まえてあらためて医療費についての知事の考えを伺いたい。


■村井知事
 医療費の免除対象者を絞り込むことができるかどうかということについて、市町村の国保主管課長会議を3月19日に開催をいたしました。その場において市町村のご意見を伺いました。その結果、被災者の納得が得られる公平性を担保した要件等の設定は困難であるという意見が大宗を占めたということでございます。従って、県は免除対象者を絞り込むことは困難と判断をいたしました。また、独自に予算を確保することも厳しいために、引き続き国に対して特別な財政支援を要望していくことになると思います。


◆Q
 すると、現実的には4月以降打ち切りになる可能性が高いかと思うが、中にはやはり困る被災者の方もいらっしゃる中で、被災者の方に対しては知事としてはどのような考えを持っているか。


■村井知事
 本当に生活が苦しく、医療費が出せないという方については、生活保護という最低限のセーフティーネットがございますので、それを活用していただくということになろうかと思います。それを超える、上回る方にとりましては、厳しい状況であることには変わりはないと思いますが、岩手県も福島県も全ての自治体でやっているわけではなくて、やれる市町に限定をしてやっているということでございます。宮城県は非常に被害の規模の大きい自治体が多数ございますので、県が1割、市町が1割といいましても、それに対応できない市町が多々出てくるということでございますので、これは県の判断でやめるということを決断したということでございます。県が2割を持てばいいということで、今年度は宮城県が2割分を持っておりました。しかし、来年度以降はとてもそれは難しい。県が1割出すのも難しいのですが、県が1割出して市町が1割で大丈夫ですかといっても苦しいところがたくさんあるということで、やはり県が2割を持たなければいけない。それは財政的に難しいということで打ち切りを決めたということでございます。大変な状況であることは変わりがないと思いますが、ぜひそういった事情をお酌み取りいただいて、一人一人頑張っていただきたいと思います。
 なお、いろいろお困りの状況が出てきた場合には、気軽に市町村や、あるいは県のほうにご相談をいただければと思っております。何らかの支援策といったようなもの、既存の制度の中でですけれども、医療費の免除ということはできませんが、何らかの形での資金の貸し付け等のそういった手当てもございますので、その辺は気軽に相談をしていただきたいと思います。


国保医療課)
 補足のご説明でございますが、岩手県につきましては、先週(18日の知事記者会見)の時点では27市町村の実施予定ということで情報がございましたが、直近で確認しましたところ、33全市町村が実施予定ということで伺っています。福島については、原発関連9市町を除く50市町のうち3市町ということでございます。

宮城県知事記者会見(平成25年3月25日) - 宮城県公式ウェブサイト


 村井知事は、岩手県と比較されるのがよほど気に入らないとみえる。被害が大きい自治体を宮城県が認定し2割分全額負担する、それ以外の自治体は継続意向があるところだけ県が1割・市町村が1割負担する、などといった工夫をすれば良いだけではないか。被害が大きいから、医療費や介護費用の自己負担分援助を行わないという論法は、被災者の共感を得られるものではない。医療費の自己負担強化は、受診抑制につながる。罹災して経済的に困窮を抱えるものにとっては、大きな問題である。
 それにしても、知事の発言のすぐ後で補足説明をしなければいけなかった国保医療課職員は、面目丸つぶれとなった県知事からどのような叱責を受けたのだろうか。いささか気の毒に思えてくる。
 財政規模の小さい岩手県で実現できる課題が、http://www.pref.miyagi.jp/fukensui/f1.htmを掲げる宮城県では早々に打ち切らざるをえない事態となった。宮城県は、岩手県よりよほど貧しい県であることを知事が宣伝したことになる。もっとも実際に貧しいのは、財政ではなく、為政者の被災者支援の志であるのだが…