東日本大震災における震災関連死に関する報告
2012年8月21日、復興庁 | 震災関連死に関する検討会より、東日本大震災における震災関連死に関する報告が出された。
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本報告が最終報告であり、今後、東日本大震災後1年間における震災関連死調査の基本資料となる。残念ながら、記述的統計に、市町村職員や有識者に対するヒアリング結果が加わったレベルであり、深い分析はされていない。重要と思える部分のみ抜き書きし、私の感想を付け加える。
- 福島県は他県に比べ、震災関連死の死者数が多く、また、その内訳は、「避難所等への移動中の肉体・精神的疲労」が380人と、岩手県、宮城県に比べ多い。これは、原子力発電所事故に伴う避難等による影響が大きいと考えられる。
- 宮城県や岩手県と違い、福島県浜通りは、原災避難の影響が大きい。地域の病院等の機能が喪失したために多くの患者を移動させることになった。動かしてはいけない状態の人を長時間かけて移動させ、更に別の地域へ移動を重ねるなどの事態となったことが大きいと感じた。
→ 原発事故による直接的な影響による死亡はなかったが、間接的な影響で亡くなった者が多かった。原発事故の被害を過小評価すべきではない。
- 震災関連死は75歳以上の高齢者が多く災害弱者。高齢者が十分なケアを受けられなかったとの印象。
- 発災後早期より在宅や施設等への対策(事前の高リスク者の把握とフォロー、物資の供給)が必要。
→ 本格的な高齢社会を迎えている日本では、福祉避難所の整備など、あらかじめ災害弱者対策をとっておく必要がある。
- 避難生活が長期にわたる中で、今後とも、心のケアについて、見守り・相談等の更なる強化が必要。震災の影響による精神的ストレスから体調を崩すケースも多い。より多くの精神科医や福祉関係者等によるサポート体制が必要。
- ニーズが少ない初期段階から、心のケアに関する情報(相談体制等)は早めに被災者及び支援者に周知しておくこと。
- アウトリーチ(全戸訪問)活動を繰り返し行うこと(精神的に不健康か否かは自身での判別が不可能なため)。※地道に取り組むことが大切。
- 震災の振り返りをきちんと吐き出すこと。※被災者は、アウトリーチ活動の際に、悩んだことや困ったことを出し切ることが大切。
- 環境の変わり目で自殺のリスクが高まる傾向にある。例えば、新潟県中越地震と新潟県中越沖地震の際には、仮設住宅から復興住宅に移行する際に、自立再建の出来なかった現実と先の見えない将来に悲観して自殺する人もいたので、注意が必要。
- マスコミは、まるで「心のケア対策」なる明確なものが存在し、それを行えば様々な被災者の心の問題が解決すると報道する傾向にある。しかし本来は、地域経済・職業・健康状態の改善等、いわゆる生活再建を通して、はじめて被災者の心の健康が回復していくものである。生活不安が解消しない状態では、心のケアは万能ではないことを知るべき。
→ 原発事故も加わり、生活再建への取組みは遅れている。被災者の精神的問題は、今後より重要性を増してくることに注意が必要。
参考文献
大槌町 保健師による全戸家庭訪問と被災地復興―東日本大震災後の健康調査から見えてきたこと―
- 作者: 村嶋幸代,鈴木るり子,岡本玲子
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- 本間寛子氏(新潟こころのケアセンター事務長)
- 上田耕蔵氏(神戸協同病院院長)
参考文献
東日本大震災、医療と介護に何が起こったのか―震災関連死を減らすために (PHNブックレット)
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参考文献
東日本大震災 石巻災害医療の全記録―「最大被災地」を医療崩壊から救った医師の7カ月 (ブルーバックス)
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上記参考文献は、震災関連死問題を考えるうえでの基本資料といえる。
なお、上田耕蔵氏とは、以前直接お会いして震災関連死について様々な教示をいただいたことがある。神戸協同病院の中にも、神戸協同病院|東日本大震災というページがある。参考にしていただければと思う。