要介護認定率が原発事故周辺自治体で急増
東日本大震災から3年が過ぎた。原発事故周辺自治体において、震災関連死の増加が問題となっている。同様に、要介護高齢者も急増しており、対策が必要な課題となっている。
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介護保険事業状況報告 月報(暫定版)|厚生労働省に、保険者(市町村)別の要介護認定者の情報がある。震災前の2010年12月のデータと3年後の2013年12月のデータを比較した。第1号被保険者に占める要介護(要支援)認定者数の割合を比較した。なお、全国の要介護認定率は、16.8%(2010年12月)→17.9%(2013年12月)と1.1%増となっている。
要介護認定率の差を市町村ごとに図示した。茶:4.6%以上、赤:3.6〜4.5%、橙:2.6〜3.5%、黄:1.6〜2.5%、緑:0.6〜1.5%、青:0.5%以下、と色分けした。
# 岩手県
岩手県全体では、1.6%増(16.5→18.1%)となっている。盛岡市など内陸部の人口密集地域で緑(0.6〜1.5%)となっており、要介護認定率の増加は全国平均並である。沿岸部と山間部、県南、県北で要介護認定率増加が目立つ。特に津波被害にあった沿岸部と県南地域で顕著である。最大は、赤(3.6〜4.5%)で示した田野畑村の4.0%増(15.8→19.8%)である。
# 宮城県
宮城県全体では、1.6%増(16.5→18.1%)となっている。仙台市及び周辺地域では、緑(0.6〜1.5%)ないし青(0.5%以下)となっている。沿岸部と県南、県北で要介護認定率が増加している。特に津波被害にあった沿岸部が顕著である。赤(3.6〜4.5%)で示されているのは、女川町の4.3%増(15.1→19.4%)と南三陸町の4.3%増(14.7→19.0%)である。宮城県第2の都市石巻市では、3.0%増(15.9→18.9%)となっている。実数でみると、6,952名より8,043名と1,091名の大幅増となっている。
# 福島県
福島県全体では、1.9%増(16.9→18.8%)と全国の倍近い増加となっている。福島市や郡山市がある中通りで緑(0.6〜1.5%)となっている。会津では一定の傾向がなく、下郷町3.6%増、三島町4.5%増、昭和村4.6%増と高い値を示しているところもあれば、只見町0.3%のように低い値のところもある。
原発事故のあった双葉郡と周辺自治体で、要介護認定率増加が顕著である。双葉郡8町村でみると、広野町3.4%増(15.9→19.3%)、楢葉町5.0%増(14.4→19.4%)、富岡町5.9%増(15.3→21.2%)、川内村5.7%増(16.9→22.6%)、大熊町8.8%増(15.8→24.6%)、双葉町9.0%(17.3→26.3%)、浪江町8.8%増(16.0→24.8%)、葛尾村9.8%(17.9→27.7%)であり、平均7.3%増(15.9→23.2%)となっている。要介護認定者も2,823人から4,150人と1,327人増えている。飯館村は8.1%増(17.7→25.8%)、南相馬市は3.6%増(14.4→18.0%)となっている。南相馬市の要介護認定者は、2,674人から3,445人と771人増となっている。
被災3県とも、全国値と比べ、要介護(要支援)認定率の増加が目立っている。なかでも、福島県双葉郡およびその周辺自治体の増加が顕著である。長期化する避難生活のなかで心身のストレスが増え、体調を崩している高齢者が少なくない。コミュニティーが寸断され、仮設住宅で閉じこもりがちの生活が続き、生活不活発病になっている者もいると推測する。遠方に避難していない場合でも、医療機関や介護事業所が被災し、サービス自体を受けることが困難になっている。
岩手県・宮城県では津波被災地において、認定率が増加している。震災関連死に至らないまでも、健康状態や生活機能を維持することが困難になっている。
地震、津波、原発事故といった複合災害が、高齢化が進む医療・介護過疎地域を襲った。介護保険情報を解析した結果をみる限り、静かに、しかし、深刻化しながら進む健康問題について、国が積極的に対策をとっているとは思えない。