介護保険給付抑制の6つの仕組み

 急速な高齢化に対応するため、介護保険制度は作られた。介護保険はその創設当時より給付抑制を目指した仕組みが組み込まれている。代表的なものは次の6つである。


(1)利用サービスの制限
 一定程度以上の要介護度がないと利用できないサービスがある。代表例が施設サービスと福祉用具サービスである。

  • 施設サービス(特養、老健、介護療養型病床)では、要介護1以上の認定が必要。
  • 介護用ベッドや車椅子レンタルは、原則として要介護2以上の認定が必要(2006年度改訂より)。


(2)区分支給限度額による上限設定
 居宅サービスにおける1月あたりの区分支給限度額は下記のようになっている。2006年度以降、要介護1相当群は、要支援2と要介護1とに分かれた。
 地域ごとに異なるが、概ね1単位=10円として計算する。区分支給限度額を超えるサービスを利用する時には全額自己負担となる。

2000〜2005年度 2006年度以降
要支援→要支援1  6,150単位  4,970単位
要支援2    10,400単位
要介護1  16,580単位  16,580単位
要介護2  19,480単位  19,480単位
要介護3  26,750単位  26,750単位
要介護4  30,600単位  30,600単位
要介護5  35,830単位  35,830単位


(3)要介護度ごとに異なる介護報酬
 要介護度が低いと、介護報酬も連動して下がる。通所介護の場合は次のようになっている。
# 通常規模事業所(月平均301-750人)

3-4時間 4-6時間 6-8時間
要介護1  381単位  508単位  677単位
要介護2  437単位  588単位  789単位
要介護3  493単位  668単位  901単位
要介護4  549単位  748単位  1,013単位
要介護5  605単位  828単位  1,125単位


(4)利用料1割負担
 介護保険サービスの利用料は原則1割負担である。例えば、要介護5で区分支給限度額いっぱいの居宅サービスを利用した場合、1月の利用料は35,830円となる。要介護1では、16,850円となる。低所得層にとっては重い負担となるため、利用を抑制することになる。


(5)介護サービス給付額と保険料との連動
 介護保険制度の保険者は市町村である。財源の内訳は、公費50%(国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%)、保険料50%となっている。したがって、介護サービス給付額が増加すると連動して市町村ごとに決められている介護保険料負担が増えることになる。保険料増大を懸念する立場にたつと、介護サービス利用を手控えることになる。


(6)ケアマネジメント
 介護保険制度は、利用者の自立を目指すことが目的とし、ケアマネジメントが行われる。サービス内容と量は介護支援専門員が利用者と相談しながら決めることになっている。
 介護サービス事業所に所属する介護支援専門員が、自らの事業所のサービスを誘導することに対する批判がある。そのこともあり、2006年度からは、要支援1と要支援2に対する予防サービスのケアマネジメントは、地域包括支援センターが行うことになった。


 6つの仕組みのうち、3つが要介護認定に関係している。したがって、要介護認定が適切に行われないと、サービスが抑制され、利用者の不利益となる。
 現在、「要介護認定の見直しに係る検証・検討会」が行われている。厚労省が要介護認定制度を改訂したのは、介護給付額を抑制するという意図を持っていたからではないか、という疑念が出されている。検証作業の結果が待たれる。