介護施設の苦境

 東日本大震災に伴い、要介護者を多数受け入れた特養などの施設が苦境に立たされている。

 東日本大震災から1カ月たった今なお、特別養護老人ホームの孤立が続いている。震災直後の混乱期には、体調を崩すお年寄りが急増。被害が小さかったホームは、被災施設から高齢者を受け入れ、定員超過の中で、少しでも入所者の生活環境を良くしようと必死だ。被災地が少しずつ秩序を取り戻す中にあっても、入所者と施設職員の心労は癒えない。

http://www.kahoku.co.jp/news/2011/04/20110415t13026.htm


 具体的な事例として、次のようなものがあげられている。なお、( )内は当院の介護担当責任者が各施設に電話をして収集した情報である。

  • 震災直後には、特別養護老人ホームに入所する高齢者の死亡や体調の急変が相次いだ。突然のライフライン断絶と物資窮乏が、震災弱者のお年寄りを直撃。「入所者に低体温症や肺炎の症状が相次ぎ、連日のように救急搬送を依頼した。1回の搬送で5、6カ所の病院に断られることもあった」(急に空床が生じたと連絡があった時に事情を聞いてみると、少なからぬ入所者が亡くなっている。震災関連死といえるかどうかは確かめていない。)
  • 送迎や緊急搬送に備えたガソリンの不足も深刻だった。福祉施設の車は緊急車両と認められないケースが大半。(居宅介護事業所も同じ。ガソリンがないために、通所サービスや訪問サービスが行えず、自宅での生活が困難になった方の対応に苦慮した。)
  • 宮城県が、福祉施設に定員の1割以上を目安に高齢者を受け入れるよう緊急要請したことも、現場の混乱に拍車を掛ける一因となったようだ。被災を免れた特別養護老人ホームでも、定員超過の状態が長引き、入所者、職員の疲労も限界に近づきつつある。(若林区名取市閖上にある従来型の特養は特に被害が甚大だった。施設の継続利用が困難のため、系列の施設に移動させた。遠方の施設となったため、家族も面会できない。施設の定員超過の影響で短期入所をお願いできなくなっている。通所サービスも困難となっている。施設にとっても収入が減り、経営状態に悪影響が出ている。)
  • 市高齢企画課は「利用者にとって決して好ましい状態ではない」と認めながらも、「今後のことは国と相談して決めたい」と話すにとどまっている。(福祉避難所などは1週間の運用が限度となっているが、今回は長期化することは間違いない。しかし、仙台市は実態を把握していない。)


 福祉施設も被災している。地震津波のような直接的被害だけではなく、低体温や肺炎などの震災関連疾患も生じている。その状況で、住まいを失ったような在宅の要介護者を受け入れている。また、医療機関のベッドを空けるために、定員を超えた入所受け入れをしている。劣悪な環境、不十分なマンパワーが原因となり、入所者の健康が脅かされている。
 紹介した河北新報の記事は、見逃されがちな施設入所者に的を絞った良記事である。ぜひとも多くの方に読んでいただきたい。