災害時救急・災害関連疾患予防から地域ネットワーク再構築へ

 東日本大震災後の対応を、脳卒中モデルを用いて考えてみた。


# 急性期(震災直後)

  • 地震および地震関連災害(津波、火事など)による損害の確認と被害の拡大予防。

 医療分野では、災害時救急医療に相当する。外傷、溺水、低体温などへの対応が必要だった。


# 亜急性期(復旧期)

  • ライフライン(電気、水道、ガス、下水道など)の復旧。
  • 情報網復旧と関連業種間のネットワーク構築。
  • 交通網復旧と物流回復。

 この時期は、災害関連疾患の予防が中心となる。不衛生、低栄養に伴う感染症、低活動に伴う肺塞栓、生活機能の低下、医療へのアクセスが困難になったことによる持病の悪化への対応が求められる。


# 回復期(復興期)

  • 個人・家庭レベル:生活の安定(住まい、生活資金)、雇用。
  • 経営体レベル:資金繰り。経済活動の安定。
  • 共同体レベル:共同体再構築。

 医療システムの再構築を行う時期である。地域ネットワークの再生が求められている。


 地域によりかなり異なる様相を示している。ほとんど被害がなかったところもあれば、地震津波原発事故・風評被害の4重苦に苦しむ地域もある。復興を視野に入れて動き出したところもあれば、1ヶ月以上過ぎてもライフライン復旧の目処もたたない地域がある。沿岸部、特に石巻あたりは、まだまだ亜急性期(復旧期)にとどまっており、災害関連疾患予防を目指し、医療を含めた支援活動の集中が必要となっている。
 仙台市中心部は、明らかに復興期に入っている。飲食店や商店などの零細企業にとっては、震災に伴う経済活動の低迷の方が地震よりずっと恐ろしい。当院でも、医局やリハビリテーション室などで歓迎会を開いている。お花見をしている職場もいる。地域経済活性化の意味を含めて、奨励している。
 建物被害等による修理・解体費用が重くのしかかる。経営基盤が弱いところでは廃業するところも出てきている。当院でも、病棟修理・外来棟解体あわせて億単位の負担が新たに生じることが明らかになった。外来や介護分野での収入も激減する中で、経営戦略の見直しを進めている。病棟と訪問系が奮闘するしかないという状態である。
 医療のネットワーク作りも進み始めている。地域連携パス、医師会、地域リハビリテーションなどの各種会合が定期的に行われる見通しである。一方、老健・特養との連携はまだまだ不十分であると感じている。福祉避難所となっている施設の窮状も伝わっている。施設訪問を意識的に進めることを検討している。