グローバリゼーション 人類5万年のドラマ

 人類史の書籍を読み漁っている中で、「グローバリゼーション 人類5万年のドラマ」という書籍に出会った。


グローバリゼーション 人類5万年のドラマ (上)

グローバリゼーション 人類5万年のドラマ (上)

グローバリゼーション 人類5万年のドラマ (下)

グローバリゼーション 人類5万年のドラマ (下)


 本書のテーマは、グローバリゼーションとは何かを明らかにすることである。前半(第1章〜第7章)では、交易商人、布教師、戦士、冒険家というキーワードで人類史を俯瞰し、人間の営み自体がお互いの結びつきを求め、絆を深めていく過程であったことを示している。後半(第8章〜第10章)では、現代社会のキーワードとしてのグローバリゼーションの功罪について論じている。
 歴史について触れた部分では、多くのエピソードを基に、営々と続く人類の所業の共通性を明らかにしようとしている。ただし、話題が多方面に渡り、かつ、時間的にも地理的にも行きつ戻りつしており、物語としての面白さに欠ける。あらかじめ人類史の全体像に関する知識があることが暗に求められている。イスラム圏や東南アジア、中南米などの歴史に疎い日本の読者にとっては少々辛い。
 一転して、グローバリゼーションについて触れた部分では、一貫性のある記述がされており、相互依存、相互接続社会に至った現代社会の状況が、グロバリゼーションの功罪を含め、簡明に説明されている。池上彰の説明を聞くような爽快感がある。ここまで読み進めてやっと、前半で人類史について触れた意味が分かる仕掛けとなっている。
 上下巻あわせて600ページを超す大著である。やや難解な構成となっているため、読む人を選ぶ本になっていることが惜しく思える。