介護保険制度の見直しに向けた論点

 2012年度に行われる介護保険制度見直しの叩き台が提案された。第37回社会保障審議会介護保険部会資料 |厚生労働省内にある、資料1:介護保険制度の見直しに関する意見(案)(PDF:416KB)が該当資料である。総数34ページに及ぶだけでなく、赤字や青字での修正や削除、両論併記があり、厚労省の意図が読み取りにくいものとなっている。


 議論の流れをつかむために、過去の資料をざっと眺めていたところ、第35回社会保障審議会介護保険部会資料 |厚生労働省にある、資料1:介護保険制度の見直しに向け、さらに議論が必要な論点について(PDF:170KB)に対立点が簡潔にまとめられていることに気づいた。全文を引用する。

介護保険制度の見直しに向け、さらに議論が必要な論点について


給付や負担の見直し等に関わる主な論点について


【利用者負担について】
高所得者に能力に応じた負担を求める観点から、高所得者の利用者負担を引き上げることについて、どう考えるか。
○ ケアマネジメントの質の向上等を図りつつ、現在、全額が保険給付となっている居宅介護支援・介護予防支援(ケアプランの作成)について、利用者負担を導入することについて、どう考えるか。
介護保険施設を利用する低所得者の食費や居住費を軽減する補足給付について、負担能力を適切に反映した仕組みとするため、施設に入所する前の世帯の負担能力や保有する資産などを考慮して、支給の要否を決定する仕組みとすることについて、どう考えるか。
○ 現在、4人部屋などの多床室の入所者に対しては、居住費のうち室料に相当する部分は保険給付に含まれ、光熱水費に相当する部分のみが居住費として保険給付の対象外とされているが、低所得の入所者に配慮した上で、多床室の入所者についても、必要な室料負担を求めることについて、どう考えるか。


【軽度者に対する給付について】
○ 重度の要介護者に給付を重点化する観点から、軽度者の利用者負担を引き上げることについて、どう考えるか。
○ 重度の要介護者に給付を重点化する観点から、生活援助サービスなど軽度者に対する給付を縮小することについて、どう考えるか。


【保険料負担について】
○ 第2号保険料の負担の応能性を高めるため、現在は加入者の人数で決めている被用者保険の保険者の負担額について、加入者の総報酬額に応じて決める方式を導入することについて、どう考えるか。


【被保険者範囲について】
○ 被保険者範囲を40歳未満の者に拡大することについて、どう考えるか。


【公費負担の引き上げについて】
○ 公費負担割合を引き上げることについて、どう考えるか。
・ 公費負担割合を5割から6割に引き上げ
・ 調整交付金を外枠化
・ 補足給付を公費負担化
・ 地域支援事業を公費負担化


 「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」では、介護保険制度の理念や成果に関しては肯定的な評価がなされている。問題となっているのは、あくまでも「給付」と「負担」とのバランスであり、厚労省は「給付」を切り下げ、「負担」を増やそうと考えている。「介護保険制度の見直しに向け、さらに議論が必要な論点について」で、厚労省側が「〜について、どう考えるか。」と提起している部分を、「〜することにしたい。」と読み替えると厚労省の意図が明確となる。

  • 高所得者の利用率負担を引き上げることにしたい。
  • ケアマネジメントに関し、利用者負担を導入することにしたい。
  • 施設に入所する前の世帯の負担能力や保有する資産などを考慮して、支給の要否を決定する仕組みとすることにしたい。
  • 多床室の入所者についても、必要な室料負担を求めることにしたい。
  • 軽度者の利用者負担を引き上げることにしたい。
  • 生活援助サービスなど軽度者に対する給付を縮小することにしたい。
  • 現在は加入者の人数で決めている被用者保険の保険者の負担額について、加入者の総報酬額に応じて決める方式を導入することにしたい。
  • 被保険者範囲を40歳未満の者に拡大することにしたい。
  • 公費負担割合を引き上げることは、(厚労省としては無理だと思っているが、委員から意見が出ている中身なので仕方なく出すけれど、)しなくても良いか。


 介護保険制度は、保険料徴収、要介護認定と区分限度支給額、ケアマネジメント、利用料負担といった利用抑制に働く何重もの仕組みがある。そもそも、医療保険制度の破綻を回避するために、慢性期医療の分野を介護保険制度として別枠にしたのが介護保険制度である。その意味で、後期高齢者医療制度と同じ問題を介護保険制度は内在している。
 団塊の世代の高齢化にあわせ、高齢社会が急速に進む。このままでは、高齢者の保険料負担は耐えられないものとなる。高い保険料を受容しますか、それとも、給付を我慢しますか、という二者択一が迫られている。
 なお、第2号保険者の負担額は加入者数によって決まるため、高額所得者の多い大企業の健康保険組合の負担割合が相対的に低くなっている。加入者の総報酬額で第2号保険者の保険料を決定すると、協会けんぽ加入者の保険料はむしろ下がる。保険料負担能力に応じた是正である。しかし、「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」では、「総報酬割の導入については、従来の保険料負担の考え方と仕組みを大きく変更するものであり、また、利用者負担の見直し等の必要な見直しを行うことなく、これを導入することについて慎重な対応を求める意見があった。」と修正されている。大企業側の強い反対意見があったことが伺える。