地域ベースのリハビリテーション介入で14人に1人が悪化を予防

 「脳卒中治療ガイドライン2009」の学習会を続けている。第7章 リハビリテーション(PDF/2,727MB)の291〜293ページに「1−7.維持期リハビリテーション」まで読み進めた。本項に次の記述がある。

1. 回復期リハビリテーション終了後の慢性期脳卒中患者に対して、筋力、体力、歩行能力などを維持・向上させることが勧められる(グレードA)。そのために、訪問リハビリテーションや外来リハビリテーション、地域リハビリテーションについての適応を考慮する(グレードB)

地域生活をベースにしたリハビリテーションの介入は、障害の悪化を軽減し、日常生活動作日常生活関連動作能力の向上を促すことが期待できる14-16)(Ia、IIb)。


 紹介されている文献16)、http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(04)15434-2/fulltextを読んでみた。理学療法作業療法、多職種共同型チームなどの外来サービスに関するランダム化試験のレビューである。計14研究の1,617名が対象で、平均年齢は70歳である。最初のBarthel Index(20点満点版)は14-18であり、中等度から軽度の能力低下がある。
 12研究の1,350名のデータをみると、ADLの悪化に関するオッズ比は0.72(95%信頼区間 0.57-0.92)となった。治療必要数Number Needed to Treat (NNT) は14(95%信頼区間 9-52)である。絶対リスク減少率は7/100ということになる。


 本レビューの対象となった研究には日本のものは含まれていない。リハビリテーション提供体制が異なるため、単純な比較はできない。治療期間、回数も様々である。発症から時間が経っていない患者も相当数含まれていると思われる。しかし、これらの要素を全て考慮しても、NNT=14という値には驚かされる。自宅に帰った後の脳卒中後遺症者に対し、適応を考慮しながら専門的なリハビリテーションサービスを提供することによって、ADLを改善させ、要介護度悪化を防ぐことができる。疾患別リハビリテーション料算定日数上限や介護保険区分限度支給額によるリハビリテーション制限が医学的にみて如何に不当であるか、Lancetに載った本研究ひとつみてもよくわかる。