新型インフルエンザワクチン接種を原則1回に方針変更

 新型インフルエンザワクチン接種を原則1回という方針変更に関する基礎資料は、10月16日・19日 新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会|厚生労働省の中にある。特に、資料1.国産ワクチン臨床試験の中間報告(速報)が重要である。

(治験概要)
9 月17 日より200 名の健康成人を対象に国立病院機構病院4 施設で、新型インフルエンザ国産ワクチンの免疫原性についての臨床試験を実施した。
 本臨床試験では、国産ワクチン(北里研究所)を通常量(15μg:皮下注射)と倍量(30μg:筋肉注射)を接種した。今回、1 回目接種の3 週間後の結果(HI 抗体価)が判明したので報告する。


(本治験の中間報告)
●本件の被験者の性別は男 41.5% 女88.5%、年齢は20-29 歳 30.5%、30-39 歳21%、40-49 歳 31.5%、50-59 歳 17%
●接種前のH1N1 のHI 抗体保有者(≧40 倍)は、194 人中7 人(3.6%)でした。
●抗体保有率(接種後≧40 倍):15μg1 回接種群では、HI 抗体価40 倍以上の人が96 人中75 人(78.1%)、30μg1 回接種群では、HI 抗体価40 倍以上の人が98 人中86 人(87.8%)
●抗体陽転率:抗体価4倍以上上昇しHI 抗体価が40 倍以上の方の割合は、15μg1 回接種群では96 人中72 人(75.0%)、30μg1 回接種群では98 人中86 人(87.8%)
●抗体価変化率は、15μg1 回接種群は14.5 倍、30μg1 回接種群35.0 倍
●抗体有意上昇率:「HI 抗体価の変化率が4 倍以上の割合」は、15μg1 回接種群は83.3%(96 人中80 人)、30μg1 回接種群93.9%(98 人中92 人)
●副反応については、接種者全体のうち45.9%にみられた。H5N1 ワクチンの66.1%に比べて低かったが、15μg 皮下注群は58.8%と30μg 筋注群33.3%に比べ、発赤、腫脹の頻度が高かった。
●高度の有害事象として、アナフィラキシー反応、中毒疹がそれぞれ1 例認められた。
※なお200 人の差の6 人については10 月9 日までに血清採取がされていなかったのでHI 抗体価はまだ測定されておりません。


(治験調整医師からの結果に対するコメント)
1)1回接種後の抗体保有率、抗体陽転率、抗体価変化率とも30μg 接種群の方が優れているが、15μg 接種群も30μg 接種群も1回接種でEMEA の評価基準を満たす。
2)CSL(スプリット、アジュバントなし)のデータ、Novartis(スプリット、MF59 入り)
のデータと比較しても遜色はない(comparable)3)15μg1回接種でEMEA の評価基準を満たすこと等を考慮すると、HA タンパク量15μg1回接種で効果的な免疫反応が期待できる。


 接種方針変更は妥当である。注目すべきは、副作用である。高度の有害事象として、喘息治療中の27歳女性のアナフィラキシー反応が報告されている。ワクチン接種後の注意として、すぐに帰宅させず、30分程度は経過観察すべきである。