2022年の超過死亡、大幅に増加

 超過死亡に関し、以下の内容で共同通信が記事を配信した。

 ギョッとする内容の見出しである。「厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家組織の会合」とあったので、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの資料等(第101回以降)|厚生労働省のことと判断し、元の資料を探してみたところ、第120回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年4月5日)の資料3-2 鈴木基先生提出資料、80〜98ページに超過死亡に関するデータがあった。その中で、84ページの表が記事の元ネタであることがわかった。

 2022年の超過死亡数は、47330-113399と記載されている。記事本文を読むと、「超過死亡」が、2022年に最大約11万3千人に上ったとの推計、とある。この記載自体は間違いではない。しかし、見出しには「最大」の文字がない。なぜ「最大」というたった2文字を節約したのか。見出しをセンセーショナルにして閲覧数を稼ぐことを意図しているのであれば姑息である。

 

 おおまかな傾向を把握するために超過死亡予測値の中央値を並べると、次のようになる。

 さらに、超過死亡予測値と過少死亡予測値の中央値の差分を見ると、以下のとおりになる。

 

 新型コロナウイルス感染拡大以前から超過死亡があることがわかる。下記関連エントリーにも触れたが、インフルエンザで超過死亡が発生することが知られている。この20数年間で最も超過死亡が多かったのは、1998/1999年シーズンの35,000人超である。学童に対するインフルエンザ予防接種が任意接種になったことが要因と考えられている。その後、高齢者に対するインフルエンザワクチンが開始されたことや、医療機関・高齢者施設における感染対策が奏功し、最近は減少していた。

 2017〜2019年の超過死亡数と過少死亡の差分は、近年のインフルエンザによる超過死亡予測値と大差はない。

 一方、新型コロナウイルス感染拡大後を見ると、2020年は過少死亡数の方がかなり多くなっている。2021年は1998/1999年と匹敵する水準となり、2022年は大幅に凌駕している。

 死因ごとのデータを見ると、さらに興味深いことがわかる。老衰が増えている。

 感染者数が爆発的に増え、高齢者施設でクラスターが発生し、そのことを契機として体調を崩し亡くなるといった場合、新型コロナウイルスが死因と判定されず、老衰という病名で死亡診断書が記載されているのではないかと推測する。

 データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-オープンソースを見ると、各年の死亡者数は以下のとおりである。

  • 2020年 3,459人
  • 2021年 14,926人(累計 18,385人)
  • 2022年 38881人(累計 57,266人)
  • 2023年4月6日まで 16763人 (累計 74,029人)

 超過死亡のデータと比較すると、2021年、2022年とも、新型コロナウイルス感染を死因とする者の約2倍の超過死亡を認める。2023年の死亡者数増加のペースは2022年を上回っていることを計算に入れると、今年の超過死亡はさらに増えることになると予測せざるをえない。