新型インフルエンザ対策で仙台方式が注目されている

 新型インフルエンザ感染者が増え続ける中、仙台方式が注目されている。

 ■梅原市長が陣頭指揮


 新型インフルエンザ感染が拡大する中、感染者が「発熱外来」だけでなく、地域の診療所で受診できる仙台市の対策が注目されている。パンデミック(世界的大流行)時にはかかりつけの診療所で診断、治療を受け、症状の軽い患者は自宅療養する方式で、季節性のインフルエンザと同様に診療し、感染拡大を防ぐのが狙い。感染者が増加している大阪府兵庫県では感染者が発熱外来に集中し、病床がパンク状態になる問題が生じているが、仙台市ではこうしたことを想定し、地元の医師会と協力して態勢を整えてきた。


 この「仙台方式」は新型肺炎(SARS)騒動に危機感を抱いた梅原克彦市長が約4年前の市長就任時から、準備を進めていた。東北大の専門家から情報を得たり、厚生労働省仙台検疫所長だった岩崎恵美子氏を副市長に迎えるなど、陣頭指揮にあたった。


 仙台市は今月、新型インフルエンザがパンデミックに突入したことを想定し、地域の診療所が軽症者診療機能を担うことなどを盛り込んだ「メディカル・アクションプログラム」を策定。パンデミック時には、感染者の多くは最寄りの「かかりつけ医」がいる医療機関に行くだろうという想定のもとに検討した。岩崎副市長は「国の行動計画は発熱外来を設定しているが普通のインフルエンザと同じ対応ができれば、かかりつけの医療機関に診てもらい、早く治療して自宅待機してもらった方が感染拡大防止になる」と話す。


 協力を依頼された医師会は患者を受け入れる診療所を募り、市は受け入れ診療所にタミフルや防護用マスクの配布準備をしている。軽症患者は抗インフルエンザ薬の処方で自宅療養を基本に、重症患者は入院治療を行う態勢を進めている。


 梅原市長は「今後は東北へも感染拡大が予想されるが、市民の生命と健康を守るため、気を引き締めて取り組んでいく」と語っている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090520-00000102-san-soci


 岩崎恵美子氏副市長は次のように述べている。

 ◇水際対策への期待は間違い


 感染症の専門家として「水際対策に期待するのは間違い」と言わざるを得ない。ウイルスは人について動くのだから、鎖国しない限り、完全には防げないからだ。


 今回はゴールデンウイークの人が動く時期に海外から入ってきたと推測される。症状の出なかった人もいれば、従来型のインフルエンザと診断されて治療を受けた人もいるはずで、実際の患者数は現状の数倍はいるだろう。


 より本質的な問題は、症状が出た場合にいかに早期に治療するかという医療体制整備だ。仙台市は、水際では防げず、流行は起きるのだという前提で現実的な対策を練ってきた。流行発生時には患者が殺到するため、発熱外来は機能しない。だから通常のインフルエンザと同様に開業医らに治療を担当してもらう。2年をかけて医師会の理解と協力を得てきた。


 流行は防ぎきれないが、きちんと治療をすれば治るのだから過度に心配することはない。かかってしまったらすぐに治療を受け、会社や学校を休んで治すこと。「人にうつさないことは公の責任である」という意識を育てなければならない。【聞き手・高橋宗男】


毎日新聞 2009年5月20日 東京朝刊

http://mainichi.jp/select/science/news/20090520ddm003040144000c.html


 梅原市長はタクシー券私用疑惑で集中砲火を浴びている。今年夏に行われる仙台市長選挙での再選はないと言われている。皮肉にも、市長としての任期を終えようとしている中、新型インフルエンザに向けて適切な対策をとっていたことが明らかになった。兵庫・大阪の混乱をみる限り、厚労省が机上で作った対策は非現実的だったことが露呈してしまった。今後は、仙台方式が新型インフルエンザに向けた医療体制整備の標準になると予想する。