新型インフルエンザ全国的な流行始まる

 インフルエンザ流行レベルマップ 2009年第33週(8月10日〜8月16日) 2009年8月19日現在より。

 インフルエンザの定点当たり報告数は2009年第28週以降増加が続いており、第33週は1.69(患者報告数7,750)となり、季節性インフルエンザの全国的な流行開始の指標値(1.00)を上回った。定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約11万人となった。都道府県別では沖縄県(29.60)、奈良県(2.96)、滋賀県(2.48)、福島県(2.45)、東京都(2.14)、大阪府(2.14)、茨城県(2.11)、高知県(2.10)、埼玉県(1.91)、長野県(1.83)の順となっている。
 警報レベルを超えている保健所地域は2箇所(沖縄県2)、注意報レベルのみを超えている保健所地域は6箇所(沖縄県3、長野県2、大阪府1)と共に増加した。また、北海道、富山県熊本県を除く44都府県の264保健所地域で定点あたり報告数が1.00を超えており、インフルエンザの流行地域およびそのレベルは共に増大している。


 インフルエンザの報告数が増加し始めた第28週以降、検出されているインフルエンザウイルスの殆どが新型インフルエンザウイルスAH1pdmである状態が続いており(感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif参照)、最近の発生患者の殆どが新型インフルエンザに罹患しているものと推定される。


 過去10年間との比較グラフを示す。


 2009年度は赤線で示されている。定点あたり1.00をわずかに上回っている。沖縄県の29.60という数値は、過去のインフルエンザ流行のピーク値とほぼ同等である。


 通常の季節性インフルエンザは、11〜12月頃から流行が始まる。今年の流行開始はかなり早い。新型のため免疫がないことが原因であると推定されている。ただし、スペイン風邪の時にも夏場以降に第2波が来た訳であり、想定外ではない。
 当初の予定より、新型インフルエンザ対策のピッチを早める必要がある。当院の場合、残っている最大の課題は、要介護高齢者などのハイリスク者と発熱者の導線を如何に分離するかということである。重症化リスクが高い人が病院に来たばかりにインフルエンザを感染されるということを少なくしたい。医療機関の構造事態は大きく変更できない。通常午前中に慢性疾患患者の外来を行っていることを考えると、有熱者は待合スペースに余裕ができる午後の外来に誘導できないかと考えている。安定した患者は長期処方をして通院回数を減らすという対応も検討している。
 多くの人にとって、インフルエンザのパンデミックに遭遇するのは初めてである。ただし、過去の大流行時と比べ、予防対策も治療も格段に進んでいる。過度におそれず、かといって侮らず、準備を粛々と進めていくことにする。