結核検査、クォンティフェロン

 昨日に引き続き、芸能人結核感染問題について。

春菜とマネ2人感染確認されず


 肺結核と発表されたハリセンボン・箕輪はるか(29)の相方・近藤春菜(26)とマネジャー2人の結核菌感染は確認されなかったことが7日、分かった。3人は、6日に血液検査を行っていた。また、箕輪が出演していた放送局でも感染者の報告などはなかった。


 東京都福祉保健局が設置した相談窓口には7日午前9時から午後5時までに「ライブを見に行ったが、検診は必要か?」など311件の問い合わせがあった。同保健局は「観覧程度で感染の危険はない」と伝えたという。

http://www.daily.co.jp/gossip/2009/04/08/0001804091.shtml


 肺結核の検査としては、胸部X線、喀痰検査(塗抹、PCR、培養)、ツベルクリン反応がある。しかし、最近はクォンティフェロン(QFT)という血液検査も利用されている。
 http://www.kekkaku.gr.jp/ga/ga-35.html(日本結核病学会予防委員会)には、次のような記載がある。

4. 実際の応用
 日本では当面この検査は以下のような場合において,記載するような方法で利用されることが望ましいと考えられる。なお,5歳以下の幼児については現在のところ妥当な判定基準が確立されていないため,この検査は推奨しない。
4.1 接触者健診
 これまで接触者健診の中でツ反検査を行うとされてきた状況,つまり結核患者が発生し,その接触者に感染が疑われる場合(とくに初発患者が喀痰塗抹陽性の肺結核患者の場合)にはこの検査をツ反検査に代わって行うことが望ましい。
 ただし,集団感染が疑われるような場合で,対象者が多数にわたるときには,経費や検査の省力を考慮して,まずツ反検査をし,対象を限定してQFTを行うことも考えられる。この場合にはツ反検査で発赤10mm以上(あるいは硬結5mm以上)に行うことを原則とする。場合によっては,まず発赤20mm以上(あるいは硬結10mm以上)の者にQFTを行い,QFT陽性率が明らかに高い(年齢に対して予測される推定既感染率よりも有意に高い)場合には発赤10mm以上(あるいは硬結5mm以上)などに枠を拡大するような方式も考えられる。
 感染曝露後QFTが陽転するまでの期間(細胞性免疫反応が検出できるまで)についての詳細な観察は未だ行われていない。しかし同じ結核感染に関して見る,ツ反のツベルクリンアレルギー発現の時期で代用すると,8〜10週間とする考え方が合理的であろう。そこで原則としてQFT検査は最終接触後8週間後に検査するものとし,曝露期間が長いとか,既に二次患者が発生しているような場合,あるいは対象者が免疫抑制状態にあるような場合には,初発患者発生直後でもQFT検査を行い,陰性であればその後8週間後に再度QFT検査を行う。
 この検査の結果が陽性であれば結核発病について精査を行い,発病が否定されれば潜在結核感染症の治療を行う。なお,集団的に検査をして陽性率が高い場合(年齢から予想される推定既感染率よりも)には,「判定保留」者も既感染として扱うことが望まれる。この検査で陰性であれば,その後の追跡は原則として不要である。ただし陰性であっても潜在結核感染の可能性の大きい場合(所属集団の陽性率が高いとか,既に多くの二次発病患者があるとかの場合)は経過観察をしてもよい。
 なお,成人では陽性でも最近の感染とはいえない可能性があり,潜在結核感染に関する解釈は慎重に行う。
4.2 医療関係者の結核管理
 職業上,結核感染の曝露の機会が予想される職場に就職・配属される職員について現在は二段階ツ反検査と,患者接触時のツ反検査が勧奨されてきたが,今後はツ反検査を廃止してQFTを行うべきである。この検査で陰性の者が,不用意に結核感染に曝露された場合にはQFT検査を行い,陽性者に化学予防を行う。
 二段階ツ反は不正確であり,またブースター現象を免れない。QFTにはそれらの問題はない。
4.3 臨床
 まず結核発病リスク者に対する化学予防の適応の決定に用いる。例えば糖尿病患者,副腎皮質ホルモン剤やTNFα阻害剤使用患者などについてである。なお,成人とくに50歳以上の場合には,感染を受けてから長期間経過していることが多く,そのような場合にはQFT検査はしばしば陰性にでる。このようなときに結核発病のリスクがQFT陽性の場合と比してどうなのかはまだよく知られていない。したがってQFT陰性を理由に感染を否定することには慎重でなければならない。
 QFTは結核の補助診断としても有用である。細菌学的な確証はないが,胸部X線所見や臓器の所見から結核性の疾患が考えられるとき,QFT陽性であれば結核感染が支持される。また結核以外の病気との鑑別にも参考となる。QFT陰性であれば,結核を否定できる可能性は大きい。これはツ反と同じであるが,ツ反よりも特異度が高いので,このような除外診断の有用性は遥かに大きい。なお,日本における非結核性抗酸菌の最重要の原因菌であるMAC感染(結核感染が併存しないとき)ではQFT検査は陽性にならないこともその有用性を大きくする。なお,本検査を根拠として活動性結核を診断することはできない。あくまでも補助診断として,傍証として利用されるべきであることを重ねて言明する。


 おそらく、今回の事例で実施された血液検査は、クォンティフェロン(QFT)である。長期間暴露された相方とマネージャーが本検査で陰性となったとなれば、感染力が低いタイプの結核だったのではないかと推測される。