介護保険リハ開始後医療保険リハ利用禁止規定

 2007年度に行われた異例の診療報酬改定において、「介護保険リハビリテーション開始後医療保険リハビリテーション利用禁止規定」が突然決まった。根拠となった通知は「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について内にある(平成19年3月30日付保医発第0330001号)である。


 2008年度診療報酬改定においても、「介護保険リハビリテーション開始後医療保険リハビリテーション利用禁止規定」は残った。
 PT-OTネット平成20年度 診療報酬改定 リハビリテーションに資料がある。「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び 「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」 等の一部改正について 保医発第0328001号 平成20年3月28日 http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/03/dl/tp0305-1ay_0001.pdfの中に、「介護保険リハビリテーション開始後医療保険リハビリテーション利用禁止規定」がある。該当する部分を引用する。

 「医療保険介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険介護保険の相互に関する事項等について」(平成18年4月28日保医発第0428001号)の一部改正について


(中略)


6.リハビリテーションに関する留意事項について
 要介護被保険者等である患者に対して行うリハビリテーションは、同一の疾患等について、医療保険における心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料又は呼吸器リハビリテーション(以下「医療保険における疾患別リハビリテーション料」という。)を算定するリハビリテーション(以下「医療保険における疾患別リハビリテーション」という。)を行った後、介護保険における訪問リハビリテーション若しくは通所リハビリテーションリハビリテーションマネジメント加算又は短期集中リハビリテーション実施加算を算定していない場合を含む。)又は介護予防訪問リハビリテーション又は介護予防通所リハビリテーション(運動器機能向上加算を算定していない場合を含む。)(以下「介護保険におけるリハビリテーション」という。)に移行した日以降は、当該リハビリテーションに係る疾患等について、手術、急性増悪等により医療保険における疾患別リハビリテーション料を算定する患者に該当することとなった場合を除き、医療保険における疾患別リハビリテーション料は算定できない。
 ただし、患者の状態や、医療保険における疾患別リハビリテーションを実施する施設とは別の施設で介護保険におけるリハビリテーションを提供することになった場合などでは、一定期間、医療保険における疾患別リハビリテーション介護保険リハビリテーションを併用して行うことで円滑な移行が期待できることから、必要な場合には、診療録及び診療報酬明細書に「医療保険における疾患別リハビリテーションが終了する日」を記載し、当該終了する日前の1月間に限り、同一の疾患等について介護保険におけるリハビリテーションを行った日以外の日に医療保険における疾患別リハビリテーションを算定することが可能である。
 また、医療保険における疾患別リハビリテーションが終了する日として最初に設定した日以降については、原則どおり、同一の疾患等について医療保険における疾患別リハビリテーション料は算定できないものであるので留意すること。


 2007年度通知は3月30日に出された。2008年度は2日早まり、3月28日に資料が出た。どうやら、日本の医療関係者はわずか数日で適応できると厚労省幹部は思っているらしい。


 2007年3月30日の通知以前は、通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションが行われた場合、医療機関が行う疾患別リハビリテーション料の算定は、同一日にのみ行えないとされていた。
 「介護保険リハビリテーション開始後医療保険リハビリテーション利用禁止規定」の結果、医療保険から排除される患者が出た。最大の被害者は、右片麻痺失語症患者である。身体機能維持を通所リハビリテーションで、言語機能改善を医療保険の通院リハビリテーションで行っていた患者は少なくない。2007年4月以降、医療保険における失語症リハビリテーションを打ち切らざるをえなかった患者・家族に対して、どういう言葉をかけて良い分からなかった。若年で時間をかければ改善が期待できると推測した患者の希望が失われた。


 リハビリテーション関係者が障害をもって生活をしている方々の代弁をしない限り、厚労省の政策の犠牲となる方々のリハビリテーションを受ける権利を守れない。少なくとも、施行わずか数日前に通知を出すやり方など、民主主義を標榜する国の官僚がとるべき態度ではない。しかし、我々はいったいどのような運動をしたのだろうか。この件を思い出すたびに苦い思いになる。
 必要な患者・利用者に、十分なリハビリテーションを提供できるようにするためには、「介護保険リハビリテーション開始後医療保険リハビリテーション利用禁止規定」撤廃が求め続ける必要がある。