エイプリルフールではなかった、長寿医療制度への名称変更

 記事が配信された時から、エイプリルフールだと思っていた。
 4月1日、後期高齢者医療制度長寿医療制度という通称で呼ぶことが決まった。新聞社の配信記事をいくつか引用する。


 Yahoo!ニュースで配信された毎日新聞の記事、長寿医療制度 首相が名称の変更指示 高齢者から批判もより。

長寿医療制度 首相が名称の変更指示 高齢者から批判も
4月2日10時14分配信 毎日新聞


 福田康夫首相は1日の閣僚懇談会で、この日から始まった75歳以上の人全員が加入する後期高齢者医療制度について、「周知不足。ネーミングもよくない」と指摘し、通称を「長寿医療制度」とするよう舛添要一厚生労働相に指示した。厚労、総務両省は新制度の内容を国民に分かりやすく伝えるため、「長寿医療制度実施本部」(本部長・舛添厚労相)の設置を決めた。


 政府は06年の医療制度改革で、65〜74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と位置づけ、新制度の名称も「後期高齢者医療制度」としていた。3月20日には「後期高齢者医療制度のお知らせ」と題した3600万部の政府広報を各戸配布したが、年配の人を中心に「勝手に線引きされ失礼だ」「末期と言われた気がする」といった批判が続出していた。


 突然の指示のため、パンフレットの差し替えなどはせず、今後、通称を広めることに努めるという。


 15日に新制度の保険料の年金天引きが始まることをとらえ、野党が医療・年金をセットで批判する構えでいることも、首相の判断に影響を与えたとみられる。【吉田啓志】


 同じく、Yahoo!ニュースで配信された産経新聞の記事、【官房長官会見】「政府の権限でやればいい 『長寿医療制度』への名称変更」より。

官房長官会見】「政府の権限でやればいい 『長寿医療制度』への名称変更」
4月2日17時46分配信 産経新聞


長寿医療制度


 −−「後期高齢者医療制度」の名前を「長寿医療制度」に変更したことについて、きょう開かれた与党社会保障政策会議では、告知期間がないままに名前が変わったことで混乱を招きかねないなどとして批判が相次いだ。福田総理の指示で名前を変えた経緯があるが、与党側の批判に対する受け止めは。名称変更を改めて考え直すことはあるか


「ま、通称そう言おうということですから、それは政府の権限でやればいいことですからね。それを変えるって話はあり得ないんじゃないでしょうか」


社会保障費圧縮】


 −−日本医師会の会長に再選された唐沢会長が、政府が骨太の方針で決めた2007年度から2011年度までの社会保障費の1.1兆円の圧縮について、これ以上やると医療が崩壊するとの認識を示している。政府として2200億円の毎年の圧縮に関して、これ以上できるかどうか


「まあ、あのー、相当乾いたぞうきんに近づいているというようなことは、舛添大臣も前から言っておられますし、総理もそれによって医療の崩壊がですね、本当に巻き起こされるということになってしまっては、それは大変だということは言っておられるわけです。社会保障関連費を前年比対比で2200億減らすということではないということですね。高齢者が増えていく等々の事情から、自然増でいけば1兆円以上増えるのを、2200億減らすんだという点はぜひ、誤解のないように。どうも、なんか、社会保障費全体が毎年2200億ずつ減っていくんだという短絡的な受けとめられ方があるようでございますが、そこは一つ正確にしていただきたいと思いますが、その上に立って、2200億どうするのか。これはまあ、来年度の予算編成、そしてその前提としての骨太方針にどう書くかということでございまして、唐沢会長のご意見もあるでしょうし、いろいろなご意見もあるでしょうから、今後それらを加味しながら骨太方針を作っていく。いずれにしても、2011年プライマリーバランス黒字というのは、確か先般の経済財政諮問会議の示された数字でもですね、なかなか厳しいということが示されておりますから、今後それに向けて歳入歳出両面でどうしていくのかということは真剣に議論していかなければいけないテーマであることは間違いがないと思います」


 自然増で1兆円増えていく社会保障費を2200億円(実に22%)も減らすことが至上命題となっている。そのために、後期高齢者医療制度を導入した。実態が分かるにつれて、「姥捨て山制度」と言われるようになった。長寿医療制度といった耳障りの良い言葉に変えても、中身は変わらない。制度開始当日のドタバタ劇は、政府の焦りを映し出している。