レセプト審査強化のおそれ

 疾患別リハビリテーション料算定日数上限問題を振り返る。


 2006年度診療報酬改定で、疾患別リハビリテーション料算定日数上限が設けられた。リハビリテーション切り捨てに対する反対運動昂揚の中で、異例の診療報酬改定が2007年に実施された。その内容は大きく分けると、以下の3点となる。


 2008年度診療報酬改定では、疾患別リハビリテーション医学管理料も疾患別リハビリテーション料逓減制を姿を消す。異例の診療報酬改定からわずか1年の命だった。
 しかし、厚労省は転んでもただでは起きない。疾患別リハビリテーション料の大幅な削減と算定日数上限超えに対する「1月13単位」の制限が新たに加わった。リハビリテーション医療費削減という当初の目標を厚労省は達成しようとしている。


 問題は、疾患別リハビリテーション料算定日数上限除外疾患の扱いである。ここに手をつけると、2006年度以上の大問題となり、再びリハビリテーション切り捨て問題に対する反対運動が盛り上がる可能性がある。厚労省は面子をつぶすことになる。世論の動向を見極めている最中だろう。


 リハビリテーション医療費削減の手段として、レセプト審査がさらに強化される可能性が高いと予測する。「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について内にある(平成19年3月30日付保医発第0330001号)部分に、平成19年のリハビリテーションに関わる診療報酬改定の説明がある。ここに算定日数上限を超えた場合に書かされるコメント記載法がやけに詳しく記述されている。具体例の部分を引用する。

 本患者は、2006年9月21日に脳出血を発症し、同日開頭血腫除去術を施行。右片麻痺を認めたが、術後に敗血症を合併したため、積極的なリハビリテーションが実施できるようになったのは術後40日目からであった。2007年2月中旬まで1日5単位週4日程度のリハビリテーションを実施し、BIは45点→65点に改善を認めた。3月末に算定日数上限に達するが、BIの改善を引き続き認めており、リハビリ開始が合併症のために遅れたことを考えると、リハビリテーションの継続により、更なる改善が見込めると判断される。


 専門的な内容について、これほど懇切丁寧にレセプトコメントの書き方を厚労省から指導いただくとは思わなかった。当院では、上記文書を参考に、次のような雛形を作り、レセプトコメントとして使用している。

 本患者は、(  )を発症し、(  )といった機能障害を生じた。(  )まで1日◯単位週◯日程度のリハビリテーションを実施し、(  )といった改善を認めた。(  )の部分の改善を引き続き認めており、リハビリテーションの継続により、更なる改善が見込めると判断される。


 当院では、算定日数上限を超えても、リハビリテーション医療が必要だと判断したら、レセプトコメントを詳細に書くことにしている。短時間ではあるが、毎月、外来患者に対する定期的カンファレンスも行っている。
 しかし、多くの医療機関では、上記レセプトコメントを記載することはかなりの精神的負担となっているだろう。返戻や減点のことを考慮すると、どうしても萎縮診療となり、算定日数内でリハビリテーションを終了することが多いのではないかと予測する。


 2007年度改訂でも、レセプトコメントなど運用に関する通知があったのは3月30日である。厚労省がどのような手段に出るか、最後まで気を抜けない。