「高齢者リハの現状、06年改定の要点、その後の課題」

 社会保障審議会介護給付費分科会(第53回)議事次第(9月18日)より、資料2−3 09年度改定に関する要望事項等について(日本リハビリテーション病院・施設協会)(PDF:400KB)より、「高齢者リハの現状、06年改定の要点、その後の課題」に関する図を提示する。


 図の左側は、高齢者リハビリテーションのあるべき方向(平成16年1月)の冒頭部分、高齢者リハビリテーションの現状に次のように記載されている部分である。

 このように、これまでわが国においては、予防、医療、介護において一体となった高齢者リハビリテーション提供体制の整備が図られてきているが、
 (1) 最も重点的に行われるべき急性期のリハビリテーション医療が十分に行われていないこと
 (2) 長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーション医療が行われている場合があること
 (3) 医療から介護への連続するシステムが機能していないこと
 (4) リハビリテーションとケアとの境界が明確に区別されておらず、リハビリテーションとケアとが混同して提供されているものがあること
 (5) 在宅におけるリハビリテーションが十分でないこと
などの課題があり、必ずしも満足すべき状況には至っていない。そのため、今後の高齢者介護の基盤となるリハビリテーションの現状についての検証と今後のあるべき姿の検討が求められている。


 この図の中央に「06年改定の要点」があるが、プラス部分しか記載されていない。
 例えば、06年改定では早期リハビリテーション加算がばっさり削られた。また、脳血管疾患等リハビリテーション料Iと同IIとの間に著しい格差がつけられたため、リハビリテーションスタッフが少ない急性期医療機関では、壊滅的な打撃を受けた。脳卒中医療に関していうと、06年改定は急性期リハビリテーションを切り捨てたものだった。厚労省に遠慮をしたためか、06年改定の負の影響には全く触れていない片手落ちの図となっている。


 図の右側、「その後の課題」部分が、今回の介護報酬に対する要望となる。


 「長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーション医療が行われている場合があること」という指摘に対する対応を横軸に沿って確認する。
 06年改定では、疾患別基準・算定日数制限(医療保険)、リハマネジメント・短期集中リハ(介護保険)が導入されている。そして、「その後の課題」として、制限越えに対する介護保険リハの対応(短時間リハの新設等)、リハ・マネの見直しがあげられている。
 本図で示唆されているように、介護保険における短時間通所リハビリテーションの創設とは、疾患別リハビリテーション標準算定日数上限対策である。06年改定では、疾患別リハビリテーション料標準算定日数超えでも13単位まではリハビリテーションを実施できる仕組みが作られた。しかし、次回、2010年診療改定では標準算定日数超えは認められず、介護保険サービスで対応することになるのではないか。


 PT-OTネット、福岡県理学療法士会主催 平成20年度診療報酬研修会 日時:平成20年3月18日(火曜日)をみると、厚労省官僚は次のように述べている。

厚生労働省保険局医療課主査: 佐方信夫氏による説明内容


■13単位の算定(維持期リハ)について
介護保険でのリハビリテーションが充実されていない現在での経過措置的なものであるため、22年度の廃止もありうる。


 私は、介護保険における短時間通所リハビリテーションの創設に関しては、基本的には賛成である。確かに、長時間の通所リハビリテーションを望まず、短時間サービスを望む方はいる。しかし、その見返りとして、医療保険の維持期リハビリテーションに関する規定を廃止することには断固反対である。
 現在は、介護保険の通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションを利用したとたんに、医療保険リハビリテーションを利用できなくなっている(参照:介護保険リハ開始後医療保険リハ利用禁止規定)。利用者の特質にあわせ、適切な維持期リハビリテーションサービスを選択できず、厚労省通知でがんじがらめにされている。
 医療費・介護費用削減を何よりも優先するという現在の政策の流れが変わらない限り、次回介護報酬改定で維持期リハビリテーションが充実するという幻想は抱くことができない。患者・利用者が選択できないような仕組みが続くのなら、国の重点施策「介護予防(要介護度悪化防止)」の達成は到底不可能ではある。