ユニチャーム、ブルボンもマスクJIS適合番号を取得

 アイリスオーヤマに続いて、ユニチャーム、ブルボンもマスクJIS適合番号を取得した。

 

 

 ユニチャーム、ブルボンいずれも現在流通している製品と性能は同じということであり、JIS適合マークがついていない商品でも安心して購入できる。

 しかし、お菓子メーカーのブルボンがマスクを販売していることを初めて知った。ついこの間、ボールベアリング会社であるミネベアツミの記事を読んだばかりだったが、いずれも自社従業員用に製造していたマスクを社会貢献のために販売するようになったという点は同じである。日本の製造業の底力を見る。

 

 シャープもより高性能マスクを販売開始した。


 国内マスクメーカーは、異業種参入で活況を呈している。特に高性能マスク分野で競争が激しくなってきている。安定供給の意味でも、選択肢が増えることは誠に喜ばしい。店頭でマスクの品定めをする場合、これからはJIS適合マークをチェックするということが賢い消費者の心得になりそうである。 

JIS適合マスクの販売開始

 2021年9月2日、アイリスオーヤマよりJIS適合マスクの販売が開始された。

 

 2020年3〜4月、COVID-19感染拡大に伴い、全国的にマスク不足が生じた。多数の粗悪品が市場に出回るなか、自衛のために全国マスク工業会・会員マーク(一般社団法人 日本衛生材料工業連合会 | マスク)を確認しながらマスクを購入するようになった。

 

 マスクの安全性に対する関心が高まっていることを受け、2021年6月16日、経済産業省はマスクのJIS企画が制定されたことを発表した。

マスクは、新型コロナウィルス(COVID-19)感染が続く現在、すべての人々の必需品となっています。COVID-19の発生以来、需要の急増に伴う海外からの輸入の急増、マスクメーカ以外の事業者による布製マスクの製造・販売などマスク市場も拡大・多様化していますが、日本にはマスクに対する公的な規格・基準は整備されていませんでした。そこで、試験方法の標準化を図り、一定の性能要件以上のマスクを国内で流通させる観点から、JISを制定しました。
本JISの制定により、一定の性能基準を満たしたマスクが製造・販売され、消費者や医療従事者の安心・安全の確保につながることが期待されます。

 

 一般社団法人 日本衛生材料工業連合会 | 自主基準・知識を見ると、マスクの自主基準はJIS準備の為工事中となっており、JIS基準は全国マスク工業会自主基準の上位互換として置き換わる途中であることがわかる。私が愛用するユニ・チャームマスク 超立体®マスクと超快適®マスク(プリーツタイプ)でかぜ・花粉・PM2.5対策を!- マスク - ユニ・チャームもJIS企画認証を目指している。

 

 感染症対策の観点からも、自国で必要な衛生材料を安定して生産できるようにすべきである。安価な輸入品に負けないように、国産のマスク製造メーカーには頑張って欲しい。そのためにも、消費者が賢明になり、品質の高いJIS適合マスクを確認の上購入することが習慣になって欲しいと思っている。

ユニバーサルデザインタクシーの次期目標は総車両数の約25%

 ユニバーサルデザインタクシーに関する記事が2件続けてあった。

 

 前者は、電動車いす利用者の乗車をユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)運転手が断った事例である。後者は、UDタクシーは一般タクシーと同様の料金設定にしなければならないにも関わらず、車いす利用者の乗降に追加料金を設定していた事例である。

 

 福祉タクシーとUDタクシーは基本的には異なる概念である。自動車:福祉タクシー - 国土交通省では、福祉タクシーを次のように定義している。

福祉タクシーとは、道路運送法第3条に掲げる一般乗用旅客自動車運送事業を営む者であって、一般タクシー事業者が福祉自動車を使用して行う運送や、障害者等の運送に業務の範囲を限定した許可を受けたタクシー事業者が行う運送のことをいう。

 介護保険法に基づく訪問介護のなかに、通院等のための乗車又は降車の介助がある。いわゆる介護タクシー利用において、この訪問介護点数と運賃が合算されて請求される。介護保険を使用しない福祉輸送サービスや民間救急搬送も、福祉タクシーに含まれる。

 

 一方、UD(ユニバーサルデザイン)タクシーはみんなにやさしい次世代のタクシーですをみると、UDタクシーは次のように定義されている。

ユニバーサルデザインタクシーとは、健康な方はもちろんのこと、足腰の弱い高齢者、車いす使用者、ベビーカー利用の親子連れ、妊娠中の方など、誰もが利用しやすい"みんなにやさしい新しいタクシー車両"であり、街中で呼び止めても良し予約しても良しの誰もが普通に使える一般のタクシーです。
※運賃料金は一般のタクシーと同じです。 

 UDタクシーは、介護が必要な者だけが利用するものではない。健康な人を含め誰もが利用してかまわないものであるという概念に基づく。ノンステップバスのタクシー版と考えた方がわかりやすい。

 

 冒頭に示した記事を読み直すと、UDタクシーの概念自体をタクシー会社や運転手が理解していなかったことが問題視されたことがわかる。そもそもUDタクシーは電動車いすの重量に耐えられるような設計が要件となっているので、電動車いすユーザーであるこを理由として断ることは間違っている。また、誰もが利用できることが要件となっていることを考えると、乗客の属性によって料金を変更してはならない。したがって、健康だからという理由でUDタクシー利用を断ることも問題となる。

 

  バリアフリー:公共交通移動等円滑化実績報告 - 国土交通省に、UDタクシーを含む福祉タクシー数の推移が示されている。

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 令和元年度末で、37,064台の車両が導入されており、うち21,736台がUDタクシーとなっている。

 さらに、令和2年11月20日に公表された「バリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について(最終とりまとめ)」では、それぞれの分野における2025年度末までの数値目標が提起されている。 

  「バリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について(最終とりまとめ)」(概要)にある表をみると、福祉タクシー車両を約90,000台に増やし、各都道府県における総車両数の約25%についてユニバーサルデザインタクシーとすることが目標と記載されている。実に野心的である。

 街中で見かけるタクシーの4台に1台がUDタクシーになったとしたら、誰もが当たり前の存在として認識するようになる。車いすユーザーも気軽に外出できるようになる。

 

 東京パラリンピックがまもなく開催される。残念ながら、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、パラリンピアンがUDタクシーを使って訪問する機会は失われてしまった。そもそも、本当にパラリンピックが安全に開催できるかどうかが疑問視されているような状況である。しかし、パラリンピック開催を目指し、バリアフリーユニバーサルデザインの普及が進んだことは間違いない。数少ない正の遺産といえる。

回復期とpost acute

 脳卒中治療ガイドライン 2009 | 日本脳卒中学会 - The Japan Stroke Society脳卒中リハビリテーションの流れでは、「発症直後から、急性期、回復期、維持期に渡って、一貫した流れでリハビリテーショ ンを行うことが勧められるが、時期の区分についての科学的な根拠はない(グレー ドC1)。」とされている。

 急性発症する疾患では、急性期acute、亜急性期subacute、慢性期chronicという流れで表現するのが一般的である。しかし、日本では、2000年度診療報酬改定において回復期リハビリテーション病棟入院料が導入された後、回復期という表現が頻用されるようになった。比較的長期にわたり医療保険を使用したリハビリテーションが提供できるようにという意味で、回復期という用語が生み出された経緯がある。一方、維持期ないし生活期リハビリテーションは、基本的に医療保険を使うべきではなく、介護保険などで行うこととする政策決定がなされた。回復期、維持期(生活期)は、学問的な用語というよりは医療政策用語といえる。

 このような事情もあり、一般社団法人 回復期リハビリテーション病棟協会では、回復期リハビリテーション病棟に相当する英語の用語がないと判断し、自らの正式名称もKaihukuki Rehabilitation Ward Associationとしている。一方、日本医学会医学用語辞典では、回復期をconvalescentとしているが、convalescentとは"recovering from an illness of medical treatment"(治療後の回復途上)という状態を意味しており、時期を表現する用語としてはあまり適当とは思えない。

 回復期に相当する用語を探していたところ、最近、post acute(postacute、post-acute)という表現をしばしば目にするようになった。PubMedで検索してみると、acute、chronicほどではないが、post acute × rehabilitation 2,306件となり、convalescent × rehabilitation 1,534件よりは多くなっている。しかも、後者の著者名をみると日本発の論文が目立つのに対し、前者は日本以外のものがほとんどである。

 

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 台湾の論文、Post-Acute Care as a Key Component in a Healthcare System for Older Adultsの抄録を読むと、”Post-acute care aims to promote the functional recovery of older adults, prevent unnecessary hospital readmission, and avoid premature admission to a long-term care facility."という表現となっており、post-acuteが日本でいう回復期に相当するものとして表現されている。一方、米国の文献、Spatial association patterns between post-acute care services and acute care facilities in the United Statesでは、"We compiled data on CMS-certified acute care and critical access hospitals and post-acute health care services (nursing homes, home health care services, inpatient rehabilitation facilities, long-term care hospitals, and hospice facilities)"となっており、post-acuteが長期療養病院やホスピスまでを含む概念となっている。

 英語辞典をみると、acuteとchronicは対義語であり、subacuteは"between acute and chronic"となっている。一方、post acuteは、急性期治療後の比較的長い期間という意味で論文で用いられている。このような状況を考えると、post acuteが日本における回復期に最も近い概念ではないかという感触をもつ。少なくとも、convalescentよりは英語話者に通じやすいのではないかと考えている。

東京オリンピック・パラリンピックにおける医療スタッフ確保が難航

 東京オリンピックパラリンピックにおける医療スタッフ確保が難航している。 

 

 この件に関し調べていたところ、日本スポーツ協会のWEBページにスポーツドクターへの要請文がアップロードされていることを確認した。

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 「組織委員会からの要請もあり、本内容についてはメールの受信者のみご確認いただくこととし、情報の取扱いについてはご留意いただきたくご協力お願いいたします。※メールの転送や、SNS への掲載はご遠慮ください。」とあったので、誰でも閲覧できる状況なのにと思いつつ、内容に関し詳細な紹介は行わない。ほぼ報道内容に沿ったものである。

 

 東京五輪組織委員会からの医療スタッフ確保の要請に関しては、東京都医師会長も寝耳に水だったようで、「私はだいたい、いつも厳しい対応をするので、嫌われているのかもしれませんが、一切、相談はありません」と述べている。

 

 東京都が主催する大規模イベントにおける医療・救護計画ガイドライン 東京都福祉保健局では、「医療・救護計画の策定に際しては、都、東京消防庁、警視庁、東京都医師会、日本赤十字社医療機関区市町村のほか、多くの職能団体や当該イベント開催に関連する団体等が円滑に連携して対応することにより、安全で安心なイベント開催に向け万全を期することが必要です。」と記載されている。

 例えば、会場医療救護本部には、「指揮統括班」を1班、「医療救護班」を1班以上配置する体制を作り、それぞれの班の構成は、医師1名、看護師等2名を原則とし、観客数約1万席(人)に対し、1か所を設置することが望ましいとなっている。「指揮統括班」は、医療・救護体制全体に精通した救急科専門医師や東京DMATの登録医師等を配置することが望ましいとまで記載されている。

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 さらに、通常時及び非常時の医療ニーズへの対応等に備え、会場ごとの搬送先となる医療機関の指定や連絡体制等について、あらかじめ整備しておくことの重要性がガイドラインに記載されている。テロ、NBC災害(放射性物質、生物剤、化学剤により発生した災害)、雑踏事故、大規模地震、火災、熱中症に加え、感染症等への対応が求められ、後方医療機関の確保・連携が求められる。

 新型コロナウイルス感染拡大がおさまらず、急速に拡大している現状を踏まえると、医療スタッフ確保、および、後方医療機関の確保は非現実的である。もうこれ以上足を引っ張らないで欲しいと苦々しく感じている。オリンピックさえなければ、もう少しまともな対策が取れていたのではないかとさえ思っている。医療関係者の神経を逆なでする形で、この時期に東京オリンピックに対し医療スタッフ確保を迫る組織委員会および政府の無神経さには呆れるしかない。

 ボランティア辞退者も増えている。医療関係者のみならず、国民の協力も得られない状態である。東京五輪は組織運営が破綻しかけており、いつ頃中止を表明するのかという状況に追い込まれていると認識している。


オンライン診療を行う医師向けの研修受講期限は今月末

 昨年4月、新型コロナウイルス感染拡大を受け、電話や情報通信機器を用いた診療が時限的・特例的に認められた。詳しくは、オンライン診療に関するホームページ|厚生労働省新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて(令和2年4月10日事務連絡)をご参照いただきたい。

 

 オンライン診療の適切な実施に関する指針(平成30年3月)(令和元年7月一部改訂)においては、オンライン診療を実施する医師は、厚生労働省が定める研修を受講することになっている。しかし、このことはあまり周知されていない。先ほど示したオンライン診療に関するホームページ|厚生労働省にも、オンライン診療研修実施概要|厚生労働省/オンライン診療研修・緊急避妊薬の処方に対する研修のリンクが下記に示すように貼られているが、申し訳程度の小ささで見逃してしまいそうになる。

 

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 オンライン研修に関するホームページを強調したいのなら、以下に示すくらいのサイズが欲しい。

 

 追記として、さらに重要な情報が記載されているので引用する(赤字+下線部分は筆者が強調)。

*「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて(令和2年4月10日事務連絡)」より抜粋。

4月10日付け事務連絡1.(6)において、時限的・特例的な取扱いが継続している間は、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(平成30年3月厚生労働省策定)で受講を求めている研修を受講していない医師が、オンライン診療及び4月10日付け事務連絡に基づく電話や情報通信機器を用いた診療を実施しても差し支えないことをお示ししたが、検討会において、不適切な事例等の是正については当該研修の受講が有効との意見があったことから、オンライン診療及び4月10日付け事務連絡に基づく電話や情報通信機器を用いた診療を実施する医師は、可能な限り速やかに当該研修を受講するよう努めることとし、遅くとも令和3年3月末までには受講すること。

 

 当院でも、新型コロナウイルス感染拡大に対応し、一時電話処方を行ったことがある。しかし、今後同様の取組みを実施せざるをえない事態となったとしても、オンライン研修を受けていないと実施できないことになる。

 私もこの間受講し、修了書をもらったばかりである。以前から、オンライン診療に興味があり独自に指針を読み込んでいたが、実際に受講してみると新たに気づかされることも多く、実臨床に役立つ内容だということが理解できた。年度末まで残りわずかだが、忘れずに受講していただきたい研修である。

 

関連エントリー

 

リハビリテーション科に関わる診療ガイドライン(10)集中治療における早期リハビリテーションとCOVID-19関連

 日本集中治療医学会HP内に、リハビリテーション科に関わる診療ガイドラインがいくつかあったため、提示する。

 

# 早期リハビリテーション

・ 集中治療における早期リハビリテーション ~根拠に基づくエキスパートコンセンサス~(2017/3/16)、ダイジェスト版(2018/5/10)

 

 

# COVID-19関連

・ Physiotherapy Management for COVID-19 in the Acute Hospital Setting: Recommendations to guide clinical practiceの原文、日本語訳掲載のお知らせ|日本集中治療医学会

・ ICUにおけるCOVID-19患者に対するリハビリテーション医療Q&A(Ver1.01)

https://www.jsicm.org/news/upload/COVID-19_rehab_qa_v1.pdf