廃用症候群リハビリテーション料算定における注意点
2016年3月4日、平成28年度診療報酬改定についてが更新され、告示・省令、通知が示された。膨大な資料のなかで重要と思われるものは、平成28年度診療報酬改定説明会(平成28年3月4日開催)資料等について内にある、平成28年度診療報酬改定説明(医科) 、 III-1 通知その02、III-1 通知その05、そして、III-1 通知その06である。
今回は、廃用症候群リハビリテーション料の新設について検討する。
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廃用症候群リハビリテーション料が、脳血管疾患等リハビリテーション料から独立した。
算定日数上限が180日から120日に短縮された以外、点数も施設基準も全く変化がないように見える。
厚労省通知「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」より、廃用症候群リハビリテーション料算定において、重要と思われる部分を抜粋する。
(2)廃用症候群リハビリテーション料の対象となる患者は、急性疾患等に伴う安静 (治療の有無を問わない)による廃用症候群であって、一定程度以上の基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力及び日常生活能力の低下を来しているものであること。「一定程度以上の基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力及び日常生活能力の低下を来しているもの」とは、治療開始時において、FIM 115 以下、BI 85以下の状態のものをいう。区分番号「H000」心大血管疾患リハビリテーション料、区分番号「H002」運動器リハビリテーション料、区分番号「H003」呼吸器リハビリテーション料、区分番号「H007」障害児(者)リハビリテーション料、区分番号「H007-2」がん患者リハビリテーション料の対象となる患者が廃用症候群を合併している場合、廃用症候群に関連する症状に対してリハビリテーションを行った場合は、廃用症候群リハビリテーション料により算定する。
(略)
(9)廃用症候群リハビリテーション料を算定する場合は、廃用症候群に係る評価表(別紙様式22)を用いて、月ごとに評価し、診療報酬明細書に添付する又は同様の情報を摘要欄に記載するとともに、その写しを診療録に添付すること。
(略)
2014年度診療報酬改定時には、「外科手術又は肺炎等の治療時の安静による廃用症候群その他のリハビリテーションを要する状態の患者であって、一定程度以上の基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力及び日常生活能力の低下を来しているものであって、心大血管疾患リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料、呼吸器リハビリテーション料、障害児(者)リハビリテーション料、がん患者リハビリテーション料の対象となる患者を除く。」となっていたことを考えると、今回の改定は、廃用症候群に対するリハビリテーション対象者を広げたことがわかる。なお、「脳血管疾患等リハビリテーション料の対象となる患者が廃用症候群を合併している場合」が含まれていないのは、これまで廃用症候群が脳血管疾患等リハビリテーション料に含まれていたためと思われる。いずれ、通知本文が修正されるはずである。
廃用症候群に係る評価表は、下記のとおりである。これまでの評価表も比較のため載せる。
他の疾患別リハビリテーション料の対象とならない理由記載の必要はなくなった。一方、「2.廃用に至った経緯」を詳しく記載する必要が生じている。あらためて、通知本文を読むと、「急性疾患等に伴う安静 (治療の有無を問わない)」とある。慢性疾患に伴う活動量低下や閉じこもりによる廃用症候群は想定されていない。したがって、急性疾患発症当日より廃用症候群リハビリテーション料を算定すると、レセプト審査時にクレームがつく可能性がある。
いずれにせよ、面倒な廃用症候群に係る評価表を記載し続ける必要がある。減点・返戻の恐れがあるという前提で、慎重に対応しなければいけないことには変わりがない。
<2016年4月6日追記>
疑義解釈資料の送付について(その1)平成28年3月31日が出た。問82に次のような記載があることに注意を払う必要がある。コメント欄のtexashitter氏のコメントどおりである。
(答) 廃用症候群リハビリテーション料の対象となる廃用症候群は、「急性疾患等に伴う安静(治療の有無を問わない)による廃用症候群であって、一定程度以上の基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力及び日常生活能力の低下を来しているもの」である。一方、回復期リハビリテーション病棟入院料の対象となる「回復期リハビリテーションを要する状態」の廃用症候群は、「外科手術又は肺炎等の治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後又は発症後の状態(手術後又は発症後2か月以内に回復期リハビリテーション病棟入院料の算定が開始されたものに限る。)」である。
従って、それ以外の廃用症候群は、廃用症候群リハビリテーション料の対象となったとしても、回復期リハビリテーション病棟入院料の対象とはならない。