がん患者がリハビリテーション難民になるおそれ

 廃用症候群リハビリテーション対象疾患から、がん患者リハビリテーション料の対象疾患が除かれた。この影響で、がん患者リハビリテーション料の届出をしていない医療機関では、がん患者に対するリハビリテーション医療を提供することが困難となった。

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 平成26年度診療報酬改定についてに、6月2日付でアップされた疑義解釈資料の送付について(その7)に、以下のように質疑応答が記載されている。

(問10)がん患者リハビリテーション料の届出をしていない保険医療機関において、廃用症候群リハビリテーションとがん患者リハビリテーション双方のリハビリテーションを必要とする状態の入院患者に対して、脳血管疾患等リハビリテーション廃用症候群の場合)を算定することができるのか。

(答)廃用症候群リハビリテーションとがん患者リハビリテーションの双方が必要な場合、がん患者リハビリテーションの適用が優先されるため算定できない。がん患者リハビリテーションを提供するために、がん患者リハビリテーション料の届出を行っていただきたい。ただし、平成26年3月31日において、脳血管疾患等リハビリテーション料(廃用症候群の場合)を算定していた患者については、がん患者リハビリテーション料の施設基準において、研修要件を満たしていないため届出できない場合についてのみ、平成27年3月31日までに限り、廃用症候群に係る評価表(別紙様式22)にその理由を記載した上で脳血管疾患等リハビリテーション料(廃用症候群の場合)を算定することはやむを得ないものとする。


 中央社会保険医療協議会 総会 (第248回)(平成25年9月4日)内にある総−3−1(PDF:227KB)の14〜15ページに疾患別リハビリテーション料の資料がある。平成24年度の病院数をみると、脳血管疾患等リハビリテーション料は(I)2,392、(II)1,560、(III)1,570、合計5,572施設あるが、がん患者リハビリテーション料は446施設に過ぎない。虚弱高齢者に対してがん治療を行った場合、亜急性期・回復期のリハビリテーションが必要となるが、受け皿が大幅に減少してしまった。
 H007-2 がん患者リハビリテーション料(1単位) | 平成24年診療報酬点数表 | しろぼんねっとをみると、がん患者リハビリテーション料の施設基準がきわめて厳しいことがわかる。特に問題なのは、「がん患者リハビリテーションに関する適切な研修を修了した理学療法士作業療法士又は言語聴覚士が個別に20分以上のリハビリテーションを行った場合」にしか診療報酬を算定できないことである。他の疾患別リハビリテーション料と大きく異なる。費用対効果を考えると、がん患者リハビリテーション料算定医療機関が大きく増加することは考えにくい。おそらく、がん患者の治療を熱心に行っている急性期医療機関に限定される。しかし、そのような医療機関では、在院日数の制限が厳しい。
 廃用症候群を狙い撃ちにした診療報酬改定の影響で、がん患者がリハビリテーション難民になりかねない事態がうまれている。がん患者からすると、とんでもないとばっちりを受けたことになる。