悪質マンション勧誘業者の撃退法

 悪質マンション勧誘業者の撃退法について考えた。1つは電話取り次ぎ段階での水際作戦、もう1つは魔法の呪文の使用である。


# 水際作戦
 マンション業者からの勧誘電話に昔から悩まされている。中には、医療機関の名前をかたって医師とのコンタクトをとろうとする悪質業者もいる。「大学病院の○○だけど、A先生はいますか。」とか、「△△医院の方からかけているんだけど、B先生とお話をしたいのですが。」などと言ってくると、電話対応をした事務は疑いもせずに、医師に取り次ぐ。電話をとったら最後、「A先生ですか、節税対策のお電話をさせていただきました。実はマンションに対する投資ですが、…」などと早口でまくしたてる。まともに対応せず、早めに電話を切るようにしているが、不快な気持ちだけが残る。「何で電話を取り次いだのか」と怒鳴られる事務は、こうして電話恐怖症になっていく。
 法人の会議でも、悪質マンション勧誘業者からの電話が話題となった。医師会をかたるなど手口は悪質化している。厳密にすると相手方に失礼な対応をしてしまうことがあるので医師のところで対応したいという達観した意見の述べる医師もいたが、私は、電話対応をする職員の教育が重要と発言した。医師からかかってくる電話のほとんどは、患者紹介に関するものである。要件がはっきりしない電話に関しては、「どのようなご要件ですか。」と一言聞き返す。所属部署を明確に述べない場合には、「失礼ですが、何科の先生でいらっしゃいますか」と確認する。逆に言うと、スムーズに患者の紹介をしたい時には、「□□病院◇◇科医師のCと申します。〜という症状の患者のご紹介をさせていただきたいので、☆☆科の先生をお願いしたいのですが。」といった定型的な話し方を身につけておく必要がある。失礼だと怒られたら、趣旨のはっきりしない電話をかけてくる医師の方が問題であるという割り切った考えを、窓口担当の事務には持って欲しいと思っている。


# 魔法の呪文
 万が一、電話に出てしまった場合には、撃退のための魔法の呪文がある。
 建設産業・不動産業:投資用マンションについての悪質な勧誘電話等にご注意ください - 国土交通省http://www.kokusen.go.jp/t_box/data/t_box-faq_qa2012_33.htmlを見ると、悪質マンション勧誘問題は社会問題化していることがわかる。ますますエスカレートするマンションの悪質な勧誘−増加する「強引・強迫」「長時間」「夜間」勧誘−(発表情報)_国民生活センターを見ると、国民生活センターへの相談件数は年々増え続けている。40歳代前後の男性給与所得者をターゲットにしており、相談件数の約15.9%が契約まで至っている。
 国土交通省のホームページの方には次のような記載がある。

宅地建物取引業法(以下、「法」という。)では、宅地建物取引業者に対し、契約の締結の勧誘をするに際して
〔1〕不確実な将来利益の断定的判断を提供する行為(法第47条の2第1項)
〔2〕威迫する行為(法第47条の2第2項)
〔3〕私生活又は業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させる行為(法施行規則第16条の12第1号のヘ)
〔4〕勧誘に先立って宅地建物取引業者の商号又は名称、勧誘を行う者の氏名、勧誘をする目的である旨を告げずに、勧誘を行う行為(法施行規則第16条の12第1号のハ)
〔5〕相手方が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続する行為(法施行規則第16条の12第1号の二)
〔6〕迷惑を覚えさせるような時間の電話又は訪問する行為(法施行規則第16条の12第1号のホ)
 などを禁止しています。※〔4〕〜〔6〕については平成23年10月1日から施行【詳細ページへ】


 次のような勧誘を受けた場合は、そのときの具体的な状況や様子(日時、勧誘してきた会社情報(正確な会社名(例えば(株)○○○不動産、△△△販売(株)など)、会社所在地、免許証番号)、担当者名、具体的なやり取り等)を記録するなどして、免許行政庁までお知らせください。

  • 断ったにもかかわらずしつこく電話をかけてくる
  • 長時間にわたって電話を切らせてくれなかった
  • 深夜や早朝といった迷惑な時間に電話をかけられた
  • 脅迫めいた発言があった
  • 自宅に押しかけられ強引に契約を迫られた
  • 絶対に儲かるから心配ないと言われた …など


 ここで重要なのは、悪質な勧誘は宅地建物取引業法宅建法)で禁止されており、場合によっては免許取り消しになるということである。「宅建法違反と判断しましたが、通報させてもらって良いですか」というのが魔法の呪文となる。


 具体的には、次のようなやり取りとなる。

  • 業者:「A先生ですか、節税対策のお電話をさせていただきました。実はマンションに対する投資ですが、…」
  • 医師:「すいません。今、忙しいので、会社、担当者のお名前、電話番号を確認したいのですが、…」

 業者が、会社、担当者のお名前、電話番号を述べれば、メモをし、その場で電話を切る。以下は担当事務に任せる。

  • 担当事務:「A医師からの指示で電話をしております。A医師は、マンションの勧誘は一切お断りしたいと言っています。」
  • 業者:「そんなことを言わずに、話だけでも聞いてくれませんか。」
  • 担当事務:「しつこい勧誘は、宅建法違反(正確には、宅建法第16条の12第1号の二の違反)となります。先日、お電話をされた時、要件を述べられずに医療機関の名前を使ってお電話をされています。このことも宅建法違反(正確には、第16条の12第1号のハの違反)となります。関係機関に通報させていただきますので、ご承知ください。」


 反撃手段を持っていると思うだけで、気分が少し楽になる。素直に会社名等を言わない場合には、「売る気がないようですね。申し訳ないですが、電話を切ります。」と言って、ガチャと切れば良い。まあ、こちらの方が余計な手間を省けて良いのですがね。